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Abstract #4037
切除不能進行膵癌患者におけるgemcitabine単独 vs. gemcitabine+S-1併用療法を比較する多施設共同無作為化比較試験 : GEMSAP study
A multicenter randomized controlled trial of gemcitabine (G) alone versus gemcitabine and S-1 combination therapy (GS) in patients with unresectable advanced pancreatic cancer (PC) : GEMSAP study.
Yousuke Nakai, et al.
背景

 切除不能の進行膵癌に対するgemcitabine (GEM) +S-1併用療法 (GEM+S-1群) は、progression-free survival (PFS) 中央値が10.0ヵ月、overall survival (OS) 中央値が20.4ヵ月と、良好な結果が得られている (Oncology. 2009; 77: 300-3)。
 そこで、GSをGEM単独療法(GEM群)と比較する目的で、本邦初の多施設共同無作為化比較試験を行った。

方法

 患者をGEM群(GEM 1,000mg/m2 30分間 iv, day1、8、15、4週毎) またはGEM+S-1群(GEM 1,000mg/m2 30分間 iv, day1、15 + S-1 40mg/m2 day1-14、4週毎) に1:1の割合で無作為に割り付けた。

Study Design

 主な適格基準は切除不能な局所進行・転移再発膵癌であること、化学療法の治療歴がないこと、ECOG PS 0-2、臓器機能が良好であることなどである。

評価項目

 一次エンドポイントはPFS、二次エンドポイントはobjective response rate (ORR)、 disease control rate、OS、安全性である。
 今回の中間解析は、最終症例登録より6ヵ月経過した2009年9月に行った。したがって、PFS はその期間で解析した。OSは最終解析時に評価される。

結果

 2006年7月-2009年2月の間に、6施設で計106例が登録された。
 Grade 3/4の全有害事象はGEM群が48%、GEM+S-1群が40%であり、主なものは好中球減少(各35%、33%) であった。
 ORRは、GEM群9.4%、GEM+S-1群18.9% (p=0.265)、disease control rateはGEM群56.6%、GEM+S-1群79.2%であった(p=0.021)。PFS中央値は、GEM群3.6ヵ月(95%CI : 2.0-5.1)、GEM+S-1群5.4ヵ月(95%CI : 3.7-9.4) (HR 0.64、95%CI : 0.42-0.97, p=0.036) であった 。

Progression-free Survival

 中間解析時点におけるMSTはGEM群が8.7ヵ月(95%CI : 7.0-11.0)、GEM+S-1群が14.1ヵ月(95%CI : 7.8-18.6) で有意差は認めていない(HR 0.69、95%CI : 0.43-1.08、p=0.105)。

結論

 中間解析時点において、GEM+S-1群はGEM群に比べPFSが有意に延長した。また、GEM+S-1群の忍容性は良好であった。
 予備的検討としてのOS評価では、GEM+S-1群がGEM群に比べ、OSを延長する傾向が認められた。

コメント

 発表者は、GEM単独療法群には2nd-lineとしてS-1使用を推奨しているとコメントした。つまり、本試験はGEMとS-1の同時使用か、順次使用かのdecisionの比較の意味もあるようである。
 GEM単独療法群の約4割の症例が2nd-lineとしてS-1療法を受けていないという結果から、PFSの早期段階での増悪症例が存在することを示していることが推測される。いずれにしても、S-1には膵癌領域で効果を向上させる期待がもてる。
 現在、本邦においては、GEST試験「切除不能進行膵癌(局所進行または転移性) に対するGEM療法/TS-1療法/GEM+TS-1併用療法の3群を比較する第III相無作為化比較試験」が行われている。すでに800を超える症例が3月末に登録終了となり、2年の経過観察期間に移っている。GEST試験の結果で標準治療が決定されることになり、今後の発表が楽しみである。

(レポート:松阪 諭 監修・コメント:佐藤 温)

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