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Abstract #4015
進行胃癌に対する1st-lineとしてのS-1+irinotecan療法 vs. S-1+paclitaxel療法を比較した無作為化第II相試験(OGSG 0402) : 最終報告
Randomized phase II trial of S-1 plus irinotecan versus S-1 plus paclitaxel as first-line treatment for advanced gastric cancer (OGSG 0402) : Final report.

Tomono Kishimoto, et al.

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背景

 本邦における進行胃癌に対する化学療法は、一般的にS-1をベースとした併用療法である。1st-lineとして行われた第II相試験のS-1+irinotecan(CPT-11) 療法(SI) およびS-1+paclitaxel療法(SP) のObjective Response Rate(ORR)は、それぞれ47.8%(OGSG 0002) 、48.3%(OGSG 0105) であった。これらの結果を受けて行われた1st-lineとしてのS-1併用療法を比較した無作為化第II相試験(OGSG 0402) は、2009年の消化器癌シンポジウムでORRが報告され、今回、その最終結果が報告された。

方法

 対象は、組織学的に腺癌と診断された切除不能または測定可能病変のある再発胃癌であり、補助化学療法以外の化学療法の治療歴がない、performance status(PS) が0/1/2、臓器機能が良好である、などの基準を満たした症例が登録された。これらの登録患者を以下の2群に無作為に割り付けた。

Arm A (SI群) : S-1 (80mg/m2/day) の21日間連続投与+CPT-11 (80mg/m2) の1, 15日目投与(5週間毎)
Arm B (SP群) : S-1 (80mg/m2/day) の14日間連続投与+paclitaxel (50mg/m2) の1, 8日目投与(3週間毎)

評価項目

一次エンドポイント:ORR
二次エンドポイント:Progression-free survival (PFS) 、Overall survival (OS) 、安全性

結果

 2005年12月〜2007年11月の期間に、SI群(51例) 、SP群(51例) 、計102例の患者が登録された。投与コース数の中央値は、SI群が4コース(範囲1-16) 、SP群が5コース(範囲1-40) であった。Grade 3/4の好中球減少(19% vs. 2%) と貧血(13% vs. 6%) はSI群でより頻度が高かったが、両群ともに忍容性は高かった。
 一次エンドポイントであるORRは、SI群が33.3%(95%CI:20.8-47.9%) 、SP群が31.4%(95%CI:19.1-45.9%) であった。Best ORRは、SI群が37.3%(95%CI:24.1-51.9%)、SP群が35.3%(95%CI:22.4-49.9%) であった。PFS中央値はSI群が173日(95%CI:134-247日) 、SP群が141日(95%CI:126-181日) であった。Median Survival Time(MST) はSI群が379日(95%CI:280-507日) 、SP群が364日(95%CI:311-549日) であった。ORR、PFS中央値およびMSTのいずれも両群間に有意差は認められなかった。

結論

 進行胃癌患者に対するS-1+CPT-11療法およびS-1+paclitaxel療法は、忍容性が高かったが、ORRは両レジメンとも期待奏効率(50%) を下回った。また、PFSおよびOSも現在の標準治療を凌駕するような期待した結果は得られなかった。したがって、いずれの療法も1st-lineとして第III相試験を実施するまでは至らないと結論づけた。

コメント

 切除不能進行胃癌に対して、本邦ではS-1単剤を対照に、S-1+cisplatin併用療法、S-1+CPT-11併用療法、そしてS-1+docetaxel併用療法それぞれの生存期間の優越性を検証する無作為化比較第III相試験が行われている。2008年消化器癌シンポジウムで報告されたTOP-002試験結果からは、S-1+CPT-11併用療法は生存期間の優越性を証明することができず、すでにS-1+CPT-11併用療法は現在の胃癌一次治療の標準治療としては推奨されていない。そして本試験において、S-1+paclitaxel併用療法とS-1+CPT-11併用療法の両レジメンともに第III相試験実施の推挙に至る効果が認められないという結果が示され、残念ながら一次治療の標準治療としてのS-1+paclitaxel併用療法も期待がもてないこととなった。
 ただし、一方ではCPT-11およびpaclitaxelは現在、2nd-lineとして期待されており、有用性検証試験が実施されている。

(レポート:松阪 諭 監修・コメント:佐藤 温)

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