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Abstract #4022
局所進行胃・胃食道接合部・下部食道腺癌に対する術前補助化学療法と手術単独療法のメタ解析
Meta-analysis of preoperative chemotherapy(CTX) versus primary surgery for locoregionally advanced adenocarcinoma of the stomach, gastroesophageal junction, and lower esophagus(GE adenocarcinoma).
Ulrich Ronellenfitsch, et al.
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背景と目的

 胃、胃食道接合部、下部食道の腺癌(胃・食道腺癌)は特性が異なるものの一つの疾患概念として扱われており、最近の大規模な解析では原発巣が異なっても化学療法の効果は変わらないと報告されている1)
 手術は根治を目指せる唯一の治療法であるが、局所進行胃・食道腺癌の治療成績は不良である。多くのRCTで手術単独療法に対する術前補助化学療法(化学放射線療法も含む) の生存期間への上乗せ効果が検証されており、今回これらの報告をもとにメタ解析を行った。

1) Chau I, et al.:Ann Oncol. 2009 May; 20(5) 885-91. Epub 2009 Jan 22.

対象と方法

 Cochrane methodologyに基づいてシステマティックレビューを行った。術前補助化学療法と手術単独療法のRCTをデータベースより抽出し、独立したレビューアーによる追加評価を行った。対象症例の適格基準は下記のとおりである。一次エンドポイントはoverall survival (OS)、二次エンドポイントはdisease-free survival(DFS)、R0切除率、手術時のT/N stage、術前補助化学療法の安全性、術後合併症としてメタ解析を行った。さらにOSについては原発部位別 (胃、胃食道接合部、下部食道)、治療法別 (化学療法、化学放射線療法) の解析も行った。なお、DFSは現在解析中である。

〔適格基準〕
1.組織学的に証明された胃または胃食道接合部、食道の腺癌
2.無治療例
3.局所進行例
4.切除可能例
5.遠隔転移のない症例

結果

 14のRCTより2,380例が解析対象となった。OSは、全対象解析では術前補助化学療法群(HR 0.82、95%CI:0.74-0.90、p<0.0001) が有意に良好であった。

 また、原発部位別では胃食道接合部例(HR 0.72)、治療法別では術前化学放射線療法でより良好な傾向(HR 0.75) がみられた。R0切除率(OR 0.68、95%CI:0.46-1.00) 、手術時のT/N stage(T; OR 1.66、95%CI:1.07-2.58、N; OR 2.27、95%CI:1.44-3.59) も術前補助化学療法群で良好な傾向であった。
 術前補助化学療法群におけるgrade 3/4の有害事象は0.16-1.97イベント/例であった。術後合併症および術後死亡のORは各々1.12(95%CI:0.88-1.08)、1.08(95%CI:0.62-1.88) と有意差は認めなかった。

結論

 胃食道腺癌に対する術前補助化学療法は安全で、OSを改善させたことから、標準治療とされるべきであるが、有効な術前補助化学療法の確立による治療法の最適化には問題が残っている。

コメント

 食道腺癌、食道胃接合部癌、胃癌に対して術前補助化学療法の有用性が証明されたメタ解析である。今回解析された術前補助化学療法の臨床試験の中ではMAGIC試験が最も症例数が多く、全体の解析結果もMAGIC試験の結果に影響を受けているところが多い。
 術前治療により、術後合併症の発症率は有意には増加していないものの、自身が外科医である演者は、やはり術前治療例では手術に注意が必要であると述べていた。
 今回の解析では、化学療法のレジメンが多岐にわたっていること、放射線化学療法の試験が3試験しか含まれていないことがweak pointとして挙げられていた。現在、我が国でもJCOG0501などのpivotalな第III相試験が進行中であり、その結果が待たれるところである。また、少なくとも胃食道接合部癌に対しては術前化学放射線療法が有効そうであり、我が国においても大規模な臨床試験の実施が望まれる。

(レポート:山崎 健太郎 監修・コメント:寺島 雅典)

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