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Abstract #3528
切除不能進行・再発大腸癌初回治療例に対するFOLFOX4+panitumumab療法とFOLFOX4療法の無作為化比較第III相試験 (PRIME試験) における皮膚毒性と抗腫瘍効果に関する検討
Randomized, open-label, phase III study of panitumumab (pmab) with FOLFOX4 versus FOLFOX4 alone as first-line treatment (tx) for metastatic colorectal cancer (mCRC) : Efficacy by skin toxicity (ST).
Jean-Yves Douillard, et al.
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Abstract #3529
切除不能進行・再発大腸癌二次治療例に対するFOLFIRI+panitumumab療法とFOLFIRI療法の無作為化比較第III相試験 (20050181試験) における皮膚毒性と抗腫瘍効果に関する検討
Randomized, open-label, phase III study of panitumumab (pmab) with FOLFIRI versus FOLFIRI alone as second-line treatment (tx) in patients (pts) with metastatic colorectal cancer (mCRC) : Efficacy by skin toxicity (ST).
Timothy J. Price, et al.
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背景と目的

 皮膚障害はEGFR阻害剤の最も頻度の高い毒性であり、grade 2以上の皮膚毒性はその抗腫瘍効果に関連すると報告されている1,2)。今回、PRIME試験、20050181試験における皮膚毒性の程度と抗腫瘍効果、PRO (patient-reported outcome) の関連について検討した。

1) Douillard J, et al: Eur J Cancer Suppl. 2009; 7: 3. Abstract 10LBA.
2) Jonker D, et al: N Engl J Med. 2007; 357: 2040-2048.

方法

◆対象

 PRIME試験 (#3528)、20050181試験 (#3529) に登録され、panitumumab (Pmab) が投与された症例。

◆検討項目

皮膚毒性の最高grade (0-1 vs 2-4) と抗腫瘍効果の検討:progression-free survival (PFS) 、overall survival (OS) 、奏効率 (response rate;RR)
[早期治療中止に伴うリードタイム・バイアスと皮膚毒性の過小評価を最小にするため、対象をPFSが28日 (50%以上の症例で皮膚毒性が最高gradeとなる日数) 以上の症例に限定したランドマーク解析を用いた]
皮膚毒性の最高grade (0-1 vs 2-4) とPROの検討:EQ-5D health state index、EQ-5D overall health rating
結果

◆PRIME試験 (#3528)

 KRAS野生型の症例で皮膚毒性grade 0-1は71例 (10日:出現までの期間中央値) 、grade 2-4は251例 (51日) 、KRAS変異型では各々69例 (11日) 、148例 (29日) であった。
 PFS中央値はKRAS野生型の皮膚毒性grade 0-1で6.0ヵ月、grade 2-4で11.1ヵ月 (HR=0.562、p=0.001)、KRAS変異型では各々6.1ヵ月、7.6ヵ月 (HR=0.661、p=0.0168) 、OS中央値はKRAS野生型で11.5ヵ月、28.3ヵ月 (HR=0.455、p<0.0001) 、KRAS変異型で10.1ヵ月、17.0ヵ月 (HR=0.595、p=0.0042) であった (下表) 。奏効率はKRAS野生型で39%、62% (p=0.003) 、KRAS変異型で36%、44% (p=0.219) であった。
 また、PRO (患者自己評価) の皮膚毒性のgrade 0-1と2-3のスコアの差は、KRAS変異の有無にかかわらず認められた。

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◆20050181試験 (#3529)

 KRAS野生型の症例で皮膚毒性grade 0-1は90例 (13日:出現までの期間中央値) 、grade 2-4は212例 (34.5日) 、KRAS変異型では各々75例 (11日) 、162例 (28日) であった。
 PFS中央値はKRAS野生型の皮膚毒性grade 0-1で4.5ヵ月、grade 2-4で7.4ヵ月、KRAS変異型では各々2.8ヵ月、6.0ヵ月 (HR=0.460、p<0.0001) であった (下表) 。
 OS中央値はKRAS野生型で9.0ヵ月、16.5ヵ月 (HR=0.415、p<0.0001) 、KRAS変異型で7.3ヵ月、13.7ヵ月 (HR=0.408、P<0.0001) 、奏効率はKRAS野生型で24%、42% (p=0.003) 、KRAS変異型で13%、14% (p=1.000) であった。
 また、PRO (患者自己評価) の皮膚毒性のgrade 0-1と2-3のスコアの差は、KRAS変異の有無にかかわらず認められた。

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結論

 KRAS変異の有無にかかわらず、皮膚毒性grade 2-4を認めた症例ではgrade 0-1の症例と比較して、PFS、OSの延長に有意差を認めた。奏効率においてはKRAS野生型で有意差を認めた。本検討の結果はPmab曝露期間と試験期間による影響を受けている可能性があり、この探索的研究からは断定的なことはいえない。

コメント

 Grade 2-4の皮膚毒性を認めた症例では、PFSおよびOSがKRAS変異の有無にかかわらず良好で、抗EGFR抗体による治療効果と皮疹の程度が相関することは以前から知られていた。一見、それを裏付けする結果のようにも思われるが、両試験ともにKRAS変異型のgrade 2-4がKRAS野生型のgrade 0-1を上回る結果が得られており、これまでの知見からすると不可解な結果であることも否めない。今回、治療経過中の皮膚毒性の最高gradeと抗腫瘍効果を比較しているため、長期間治療症例、有効症例がgrade 2-4に分類されている可能性がある。皮疹と抗腫瘍効果の関連について検討するためには、治療開始後早期 (4 or 8週以内など) の皮疹のgradeに限定した解析が必要と思われる。

(レポート:山崎 健太郎 監修・コメント:寺島 雅典)

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