瀧内:なるほど。欧米のデータをそのまま日本に外挿するのは危険であるということですね。化学療法でも同じ事が言えるのではないかと思います。先程出たDCFも非常に毒性が高いですから、いくらDr.Ajaniが標準治療の一つになるといっても、そのまま日本に受け入れるのは難しいと思います。進行再発胃癌に関して、日本は日本で標準治療を作っていくべきなのか、それともアジア全体で今後qualityの高い臨床試験をやり、これが胃癌に対して有効なのだという事実をglobalにアピールしていくべきなのか、その点に関してどうでしょうか。大腸癌と異なり、胃癌では必ずしも欧米の結果を受け入れる必要はないように思うのですが。

大津:私も、胃癌と大腸癌では事情が違うと思います。大腸癌では海外のデータを受け入れて、globalな臨床試験に入っていくべきですが、胃癌の場合は、先ほど触れたDCFとJCOG9912の議論もあるように、状況が異なります。将来的には、アジアを中心として、globalな臨床試験を作っていきたいと思います。そのためにもまず、JCOG9912やS-1 vs S-1+CDDP、S-1+CPT-11のphase IIIの結果をきちんと出し、標準治療を確立していかないと始まりません。当面はそれが目標です。それによって、アジア中心にやっていける素地ができていくと思っています。

瀧内:アジアとの連携で、いくつか具体的に臨床試験の計画が動き始めていると聞いていますが、現時点でアジアと共同での試験は可能だと思われますか。

朴:医師主導治験はまだ不可能でしょうね。やはり企業の治験という形にならざるを得ない。保険制度も国によって違いますので、承認薬も違ってきます。その壁は大変厚く、JCOGが韓国の先生方に声をかけて、ではやりましょう、ということは現時点では不可能です。やはり経済的なバックアップがどうしても必要です。

瀧内:大きな臨床試験を組む前に、phase IIのような小さな試験をまず企業と共同でやってみるということは考えられませんか。

朴:それは意味があると思います。お互いに会話できる土壌を作り、お互いをよく知ることから始めることが重要だと思います。むしろ最初はそうならざるを得ないと思います。

瀧内:臨床試験の質に関しては、最近日本も上がってきているといわれますが、韓国の状況はどうなのでしょうか。

朴:病院のfacilityも含めて、医療の質のレベルはそんなに変わらないだろうと思います。ただ、結局質の高い試験を組むためには、今はしっかりお金をかけるしかないと思います。また、韓国にはJCOGのようなボランティアに近い組織がないというのが一番大きい問題です。ですから、医師主導の試験という意味では少し心配です。企業がついて、しっかりお金をかけてやったものに関してはそれなりのことができるはずです。protocolを準備し、そのとおりやればよい状況を作れば、まず問題ないと思います。

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