医療現場における患者とのコミュニケーションの重要性が叫ばれて久しい。しかしながら、実際にそれが日本のがん患者に特化したコミュニケーション・スキルのプロトコル“
SHARE”として体系化され、臨床で用いられつつあることは、抗がん治療医の間ではまだ十分に浸透しているとはいえない。

コミュニケーション・スキルを学習し、患者さんやその家族の気持ちと向かい合い、共感しながら治療を行うことは、日常臨床に忙殺される医師にとっては理想論に聞こえるかもしれない。しかし、円滑なコミュニケーションは、患者側の「心理的苦痛の軽減」や「医療への満足度の向上」だけでなく、「治療アドヒアランスの向上」「 (医療者自身の) burnoutの予防」「専門職としての充実感」「訴訟リスクの減少」等が得られることが複数の研究によって示されており、実は医療者側のメリットも大きい。
SHAREに表される基本的なコミュニケーション・スキルは、すべての医師に求められる資質であり、決してオプショナルなものではないのである。