消化器癌治療の広場

2014年消化器癌シンポジウム 特別座談会「切除不能進行・再発大腸癌 バイオマーカーの最前線―より高いOS延長効果を目指して―」

Discussion 1
RAS の検査方法について

吉野: ありがとうございました。それではディスカッションに移りたいと思います。PRIME試験におけるPFSの評価は中央判定で行われたのでしょうか。

Douillard: 評価は全て中央判定で行われました。CTは放射線専門医の委員会により判定され、RAS 変異は中央検査機関が評価しました。

吉野: FIRE-3試験で奏効率とPFSに差がつかなかった理由には、PFSの評価が中央判定ではなく、治療医判定だったことが影響している可能性もあると思います。

Douillard: そうですね。主観が入る奏効率とPFSでベネフィットがみられていないので、評価が理由である可能性はあると思います。ただ、PRIME試験PEAK試験FIRE-3試験の対象となる患者における一番の目的は、生存期間の延長です。つまりOSが最も適切な評価項目であり、いずれの試験でも一貫してOSのベネフィットが認められているということが重要です。

吉野: RAS 解析の対象が試験によって若干異なっていますが、PRIME試験RAS 解析にはKRAS codon 59も含まれていたのでしょうか。

Douillard: KRAS codon 59変異は5例しか認められなかったため、統計上の理由から解析には含めず、NRAS codon 59とともに探索的解析としています。実際、KRAS codon 59変異は稀であるため、フランスにおける検査にも含まれていません。

市川先生

市川: RAS 検査にはBEAMing法が用いられることもありますが、PRIME試験で用いられたサンガー法およびWAVE-based SURVEYOR Scan kitと感度が高いのはどちらでしょうか。

Douillard: PRIME試験におけるカットオフ値は5%でした。BEAMing法は0.1%までの検出が可能とされていますが、カットオフ値の設定次第でしょう。今回の2014年消化器癌シンポジウムで発表される予定のCRYSTAL試験とOPUS試験RAS 解析ではBEAMing法が用いられています。

吉野: FIRE-3試験におけるRAS 解析ではパイロシークエンス法を用いているようですね。臨床における適切な感度については、0.1%、1%、5%、10%と意見が分かれています。

Douillard: これまでに報告された多くの試験では5%が用いられています。0.1%まで検出することに意味があるとは思えません。

吉野: 我々がこれまで行っていたKRAS exon 2の検査は主にScorpion-ARMS法を用いており、感度は1%でした。KRAS exon 2検査の感度が1%で、RAS 検査の感度が5%ということになってしまいます。

Douillard: 用いる検査方法やカットオフ値は変化しています。次世代シークエンシングを用いるようになれば、今よりも標準化されると期待しています。

吉野: 近い将来には次世代シークエンシングに期待したいです。しかし、現在は非常に高価です。

Douillard: 確かに現在は高価ですが、将来はもっと安価になるでしょう。

抗EGFR抗体薬の位置づけ

吉野: CALGB80405試験についてはどうお考えでしょうか。

Douillard: CALGB80405試験における併用化学療法の多くはFOLFOXで、FOLFIRIは主に術後補助化学療法としてFOLFOXを使用した患者に対して投与されたと考えられます。したがって、解析が少し複雑になるかもしれません。

吉野: そうですね。ただ、日本における1st-lineはFOLFOX + Bevacizumabが一般的なので、CALGB80405試験の結果は多くの腫瘍医に治療のパラダイムシフトを促すでしょう。

Douillard: フランスにおける1st-lineの併用化学療法は、FOLFOXとFOLFIRIがおよそ50%ずつです。FOLFIRIはFOLFOXのような神経毒性がみられないため長期投与が可能で、下痢の管理も難しくありません。

吉野: 50%ずつというのは、RAS 変異型と野生型の割合と同じですね。本座談会のキーワードになるかもしれません。

Douillard: そうですね。併用化学療法に関しては議論の余地がありますが、1st-lineにおける抗EGFR抗体薬の使用に関しては、かなり明確になったと思います。

吉野: Douillard 先生が示された、1st-lineでFOLFOX + Panitumumabを投与し、2nd-lineでCPT-11ベース化学療法 + Bevacizumabを投与する戦略は、E3200試験の結果とも一致しており、非常に魅力的なデータだと思います。
 それでは続いて、私から日本におけるRAS 検査について紹介させていただきます。

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