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GI cancer-net 海外学会速報レポート 2013年6月 シカゴ

背景と目的

 切除不能進行・再発大腸癌患者を対象とした本試験は、当初、化学療法 (FOLFOXもしくはFOLFIRI) + Bevacizumab (BV)を標準治療として、化学療法 + Cetuximab、化学療法 + BV + Cetuximabの有効性と安全性を比較検討するデザインであったが (図1)、途中でプロトコールが改訂され、化学療法 + BV + Cetuximab群は登録中止となり、またKRAS 野生型に限定したデザインとなった。
 今回は皮膚障害による影響も含め、QOLと安全性の評価が報告された。

図1

対象と方法

 治療前、無作為化後6週、3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月に、EORTC QLQ-C30およびDermatology-Specific Quality of Life (DSQL) Formを用いてQOL調査が行われた。

結果

 518例が登録され、その多くはプロトコール改訂前に登録された。平均年齢は59歳で、PS 0の患者が62%を占めた。

 EORTC QLQ-C30を用いた調査では、全般的健康 (global health)/QOLにおいて3群間に有意差は認められず (p=0.164)、身体、役割、社会、情緒、認知の各機能についても、いずれも有意差は認めなかった。一方、DSQLによる調査では、皮膚症状 (p<0.001)、皮膚状態に起因する社会活動の制限 (p=0.008)、外見に対する懸念 (p<0.0001) の3項目において3群間に有意差が認められ、化学療法 + BV群でスコアが低かった。

 FOLFOX投与例とFOLFIRI投与例の比較では、EORTC QLQ-C30、DSQLのいずれにおいても有意差は認めなかった。

結論

 Cetuximabを含む治療群では、皮膚障害に関する項目のスコアは不良であったが、その他のQOLスコアはCetuximabを含まない治療群と有意差を認めなかった。

コメント

 FIRE3試験と並び、BevacizumabとCetuximabをhead to headで比較した本試験は、2013年米国臨床腫瘍学会で最も注目された試験結果の1つであるが、残念ながら、今回は主要評価項目の解析結果ではなく、付随して行われたQOL評価の報告であった。Cetuximab特有の皮膚障害は有意差がみられたものの、全体的なQOL評価には差はないと報告された。ただし、主要評価項目の評価が報告されていない状況での解釈は、ほぼ意味をなさない。結果が待たれる。

(レポート:中島 貴子 監修・コメント:佐藤 温)

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