Discussion現地座談会

消化器癌における免疫療法

#4001:胃癌に対するPembrolizumab
進行胃癌に抗PD-1抗体薬Pembrolizumabを投与した際のPD-L1発現と予後の関連性を検討

室:次は胃癌です。川崎先生お願いします。

川崎:ESMO20142015年消化器癌シンポジウムで室先生が発表されたKEYNOTE-012試験の追加報告です。切除不能の進行再発胃腺癌/食道胃接合部腺癌で、腫瘍細胞と免疫細胞の両方でPD-L1発現を確認した患者を対象にPembrolizumab (10mg/kg) を2週間毎に投与しました。
 スクリーニングされた162例中65例 (40%) がPD-L1陽性であり、39例が登録されました。その結果、主要評価項目である独立中央判定による奏効率は22.2%、施設判定による奏効率は33.3%でした。奏効までの期間中央値は8週、奏効期間中央値は40週です。標的病変の変化率は図6の通りです。PD-L1発現と奏効率には関連性が認められています。
 Grade 3/4の治療関連有害事象として、倦怠感、甲状腺機能低下症、末梢神経障害、肺臓炎などを認めましたが、治療関連死亡は認めず、免疫学的有害事象の多くはgrade 1/2でした。

 以上のように、Pembrolizumabは進行再発胃腺癌/食道胃接合部腺癌において抗腫瘍効果を示し、有害事象はコントロール可能でした。また、腫瘍細胞と免疫細胞の両方におけるPD-L1の発現が、対象患者を選択する上で重要であることが示唆されました。

室:寺島先生、いかがでしょうか。

寺島:約半数に腫瘍縮小を認め、奏効期間が長いことや、いったん増大してから縮小が得られるpseudoprogression (偽増悪) の症例があるなど、殺細胞性抗癌剤とは異なるプロファイルを持っており、非常にインパクトのある成績でした。外科医としては、患者さんの腫瘍からワクチンをつくり、このような薬と併用することで治癒に持っていける時代が来るのではないかと期待しています。

坂本:PD-L1陽性胃癌の特徴となるようなbackground characteristicsは何かありますか。

室:一般的にはEB ウイルス関連胃癌、MSI-H胃癌がPD-L1陽性になりやすいとされていますが、本試験ではデータの開示がなく、明らかではありません。

吉野:図6を見るとpseudoprogressionが数例ありますが、驚くほどの変化を見せています。一方、早期にPDで中止になった症例もあるので、担当医がpseudoprogressionを考慮して腫瘍増大後も治療を続けていれば、もっと結果がよくなった可能性はありますよね。

室:今回はsalvage lineや4th-lineが多いので中止を余儀なくされたということもありますが、確かにもう少し辛抱強く続けていれば腫瘍縮小したかもしれません。

吉野:判断が難しいですね。

室:今回発表はしていませんが、腫瘍量が少ない症例で有効性が高いというデータもあるようですので、もっと早い治療ラインでより有効性が期待できる可能性があると思います。最終的には寺島先生が仰ったように、術後補助化学療法などは有望ではないでしょうか。

Lessons from #4001

  • Pembrolizumabは進行再発胃腺癌/食道胃接合部腺癌に抗腫瘍効果を示し、有害事象はコントロール可能であった。
  • 腫瘍細胞と免疫細胞の両者のPD-L1発現が、対象患者を選択する上で重要であることが示唆された。
  • 免疫チェックポイント阻害剤のような免疫療法ではpseudoprogression (偽増悪) がみれらることがあるため、治療の継続・中止の見極めを慎重に行う必要がある。

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