Discussion現地座談会

消化器癌における免疫療法

#4010:食道癌に対するPembrolizumab
PD-L1陽性進行食道癌に対するPembrolizumab の効果と安全性を検討

室:最後は食道癌です。川崎先生お願いします。

川崎:KEYNOTE-028試験は、PD-L1陽性固形癌に対するPembrolizumabのマルチコホート第Ib相試験で、食道癌コホートの対象は食道または食道胃接合部の扁平上皮癌または腺癌患者です。Pembrolizumab (10mg/kg) は2週毎に最長2年間投与しました。スクリーニングされた90例中37例がPD-L1陽性であり、23例が試験に参加しました。年齢中央値65歳、82.6%が男性で、組織は扁平上皮癌73.9%、腺癌21.7%、粘膜表皮癌4.3%で、87%に2回以上の前投与歴があります。

 CRは認めませんでしたが、奏効率は30.4%でした。標的病変の変化率は図7のとおりです。治療関連有害事象は9例に認め (39.1%)、grade 3/4はリンパ球数減少2例 (8.7%)、食欲減退1例 (4.3%)、肝障害1例 (4.3%)、そう痒性皮疹1例 (4.3%) でしたが、治療関連有害事象による治療中止は認めず、今後の応用が期待されます。

室:寺島先生、いかがでしょうか。

寺島:食道癌に対する抗PD-1抗体薬の初めての報告ですが、胃癌と同様、約半数で抗腫瘍効果を認め、奏効例は長期間縮小が維持されていました。今回の報告ではアジア人が多かったため扁平上皮癌が約7割を占めていましたが、組織型にかかわらず効果が示されており、組織型よりも遺伝子発現プロファイルの方が重要なのだと感じました。

大村:明確なデータがあるわけではないのですが、食道癌は術前の低栄養では説明がつかない免疫能の低下があり、術後の肺合併症につながるという印象を持っていました。PD-L1が全身の免疫能を落としていた可能性もあると考えられるので、抗PD-1抗体薬による術前療法も検討する価値があると思います。

室:先ほど胃癌では術後補助化学療法に有望ではないかという話がありましたが、食道癌は術前補助化学療法の可能性もあるということですね。

佐藤 (温):時代は変わりましたね。

谷口:現在、抗PD-1抗体薬としては、PembrolizumabはPD-L1陽性例、Nivolumabはall comerで臨床開発が行われていますが、これだけ副作用が軽いのであればPembrolizumabもバイオマーカーを考えずall comerとしてもいいのではないかと思います。それくらい魅力的な薬剤です。

大村:免疫学的有害事象として、甲状腺機能低下症が報告されていますね。

室:自己抗体等が産生されることで免疫学的有害事象が発現しますが、甲状腺機能低下症にも甲状腺機能亢進症にもなります。したがって、自己免疫性の肝障害などがある症例は適格条件から除外されています。

寺島:日本における開発はどの程度進んでいるのでしょう。

室:Nivolumabはメラノーマでは既に保険収載されており、肺癌は恐らく年内に承認されると思います。一方、Pembrolizumabの胃癌はもう少し時間がかかると思います。また、抗癌剤との併用も肺癌や胃癌などで進められています。バイオマーカーについての考え方として、例えば、抗癌剤との併用ではall comerで、salvage lineにおける単剤ではバイオマーカーで絞り込むという考え方もあると思います。
 それでは、最後に大村先生から今年の米国臨床腫瘍学会年次集会を総括してお言葉をいただければと思います。

大村:今年は、免疫療法が印象深い年次集会でした。免疫チェックポイント阻害剤は癌治療をブレークスルーすると考えられますし、今後様々な薬剤との組み合わせにも期待できます。非常に明るい気持ちになる米国臨床腫瘍学会年次集会と座談会だったと思います。

室:ありがとうございました。

Lessons from #4010

  • Pembrolizumabは治療歴のある食道癌においても30%の奏効率を認め、安全性も特に問題はなく、今後の展開が期待される。
  • 食道癌では抗PD-1抗体薬の術前投与も有用である可能性があり、今後の検討が望まれる。

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