Discussion現地座談会

消化器癌における免疫療法

#LBA101:肝細胞癌に対するNivolumab
進行肝細胞癌に対するNivolumabの安全性と抗腫瘍効果を検討

室:引き続き、肝細胞癌に対するNivolumabについて、谷口先生お願いします。

谷口:進行肝細胞癌に対する抗PD-1抗体薬Nivolumabの第I/II相試験です。主要評価項目はDLTを含む安全性の評価で、非感染 (Uninfected)、HCV、HBVの3群に分け、用量漸増パートと拡大パートが設定されています。Child-Pughスコア7点以下を対象としており、70%が肝臓以外の臓器転移を有していました。

 結果として、DLTは47例中1例のみで、10mg/kgまで増量されましたが、最大耐用量 (MTD) には到達しませんでした。今後、拡大パートは3mg/kgを採用して進んでいくようです。有害事象では、特にウイルス性肝炎等で肝障害が懸念されましたが、AST上昇19%、ALT上昇15%、grade 3以上はそれぞれ11%、9%と許容範囲内でした (表4)。
 有効性については、奏効率がUninfected群14%、HCV群36%、HBV群10%でした。非常によく効いている症例があり、奏効期間が非常に長いという特徴があります。12ヵ月時点での生存率も62%と良好です。

室:佐藤温先生、いかがでしょうか。

佐藤 (温):肝臓癌は、肝臓自体が主要な代謝臓器であり、抗癌治療に大きく影響するウイルス感染や肝線維化があるため、できるだけ有害事象を防ぐことがポイントになります。Nivolumabは肝障害を起こさずに有用性が認められることが示唆されたので、今後はこのような薬剤が台頭してくると考えられます。
 本剤は、メラノーマに加えて、今年の3月にプラチナ併用化学療法中、あるいはその後に増悪した進行扁平上皮肺癌で承認を取得しています。本演題の次の演題 (#LBA109) が非扁平上皮非小細胞肺癌の2nd-lineにおけるNivolumabの比較試験でしたが、標準治療のDocetaxel単剤に対し、OSの有意な延長が認められたことが報告されました (HR=0.73, p=0.0015)。これだけ理論と臨床結果が一致してくると、様々な癌種において免疫チェックポイント阻害剤が主流になってくる可能性が大きいと感じました。

室:HCVとHBVで有効性に違いがあるのは、何か理由があるのでしょうか。

谷口:症例数が少ないですので本試験の結果だけで有効性に違いがあるとは言えないと思います。

佐藤 (温):これまで免疫療法といえば科学的根拠のない民間療法が多く存在してきましたが、今回、科学的なメスを入れて免疫療法の効果を明らかにしたことは大きいと思います。ただ、報道のされ方によっては、科学的根拠のない民間療法までひと括りに論じられてしまう可能性があるため、危惧されます。

Lessons from #LBA101

  • Nivolumabは良好な安全性プロファイルを有し、肝障害を起こさずに、HBV・HCV感染を含む肝細胞癌に対して有効性を示すことが示唆された。
  • 今後は肝癌においても、免疫チェックポイント阻害剤が台頭してくる可能性がある。

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