Discussion現地座談会

切除不能大腸癌の1st-lineにおけるBevacizumabと抗EGFR抗体薬

#3510:TRIBE試験
大腸癌の1st-line治療としてのFOLFIRI + BevとFOLFOXIRI + Bevを比較したTRIBE試験のサブグループ解析として、遺伝子変異別の効果を検討

室:続いては、FOLFOXIRI + Bevを検討したTRIBE試験のサブグループ解析です。

谷口:TRIBE試験はFOLFIRI + Bev vs. FOLFOXIRI + Bevの第III相試験です。今回の解析では、既報KRAS/NRAS のcodon 12, 13, 61、BRAF codon 600に加え、KRAS/NRAS のcodon 59, 117, 146と、現在推奨されているすべてのcodonを測定しています。
 遺伝子変異別に解析を行ったところ、OS中央値はRAS/BRAF 野生型が37.1ヵ月と最も良好であり、RAS 変異型は25.6ヵ月、BRAF 変異型は13.4ヵ月でした (図3)。したがって、RAS 変異とBRAF 変異は予後不良因子であるという結果です。
 一方、FOLFIRI + BevとFOLFOXIRI + Bevにおける治療効果の比較では、RAS/BRAF 野生型のOS中央値が33.5ヵ月 vs. 41.7ヵ月 (HR=0.77)、RAS 変異型で23.9ヵ月 vs. 27.3ヵ月 (HR=0.88)、BRAF 変異型で10.7ヵ月 vs. 19.0ヵ月 (HR=0.54) であり、いずれの集団でもFOLFOXIRI/Bevのほうが良好でした (表2)。

室:佐藤温先生はどうお考えでしょうか。

佐藤 (温):これまでもBRAF 変異型が予後不良であることは報告されてきましたが、有効な薬剤は少なく、FOLFOXIRIが最も期待されていました。今回のデータでもOS中央値で約8ヵ月の差が出たことから、FOLFOXIRI ± BevがBRAF 変異型に対して最も有力な治療法になるだろうと予想されます。これまでFOLFOXIRIは毒性の管理が難しいため本邦ではあまり浸透してきませんでしたが、遺伝子検査でBRAF 変異が抽出されるようになれば、クローズアップされるでしょう。今後我々は毒性の強い治療を管理できる能力も備えておくべきだと思います。

寺島:この試験はRAS/BRAF 野生型が非常に少ないですね。

室:両群ともBev併用の試験なので、KRAS 変異型が多くなったのだと思います。

佐藤 (温):BRAF 変異によりこれほどOSに差が出ることを考えると、BRAF 検査は必要であると考えられます。

吉野:確かにその通りです。BRAF 変異が予後不良因子であることは明らかですし、BRAF 変異に対する有効な治療法も報告されました。ただ、様々な声があるのも事実なので、BRAF 変異を測定すべきであるという要望を、学会から挙げるのが一番だと思います。

室:ガイドラインにどこまで記載するかが重要ですね。実際、NCCNやESMOのガイドラインにはBRAF 変異の測定が推奨されています。

吉野:BRAF 変異型の患者は状態が悪いことが多く、2nd-lineに進めないケースもあります。RASBRAF は同時に測定できるので、1st-line治療前に同時に測定できるようにすべきだと思います。

Lessons from #3510

  • FOLFOXIRI/BevはRAS/BRAF 変異の有無に関わらず、FOLFIRI/Bevに比べてOS延長効果が確認された。
  • BRAF 変異は予後不良因子であるが、FOLFIRI/Bev療法が有効であるため、BRAF 検査の意義が明確になった。

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