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GI cancer-net 海外学会速報レポート 2014年6月 シカゴ

背景と目的

 切除不能進行・再発大腸癌の1st-lineにおいてFOLFOXIRI + Bevacizumab療法とFOLFIRI + Bevacizumab療法を比較したTRIBE試験では、FOLFOXIRI + Bevacizumab療法が奏効率およびPFSにおいて有意に良好であり、OSにおいても良好な傾向が示された。今回、TRIBE試験においてRASBRAF 変異が予後または効果予測因子であるかどうかを検討するための追加解析を実施した。

対象と方法

 原発巣または転移巣から抽出されたDNAを用い、パイロシークエンス法でKRAS NRAS (codon 12, 13, 61) およびBRAF (codon 600) の変異を中央判定で解析した。

結果

 TRIBE試験で無作為化された508例のうち、407例 (80.1%) で変異解析を行い、375例 (73.8%) が評価可能であった (図1)

図1

 

 予後因子としての解析を行ったところ、RASBRAF 野生型ではPFS中央値12.2ヵ月、OS中央値37.9ヵ月、RAS 変異型ではそれぞれ11.0ヵ月、26.3ヵ月、BRAF 変異型ではそれぞれ7.0ヵ月、13.4ヵ月であり、PFS、OSともに3つのサブタイプ間に有意差を認めた (p=0.001、 p<0.0001)。

 また、効果予測因子としての解析では、PFS、OSいずれも変異の有無にかかわらず、FOLFOXIRI + Bevacizumab療法で良好であった (図2、3)

図2

図3

結論

 RASBRAF 変異にかかわらずFOLFIRI + Bevacizumab療法に対するFOLFOXIRI + Bevacizumab療法の優越性が示された。予後因子としての解析では、RAS またはBRAF 変異を有する症例は、ともに野生型の症例より予後不良であった。RASBRAF ともに野生型の症例では、FOLFOXIRI + Bevacizumab療法はPFS、OSいずれにおいても極めて良好な結果を示した。

コメント

 本報告は、2013年米国臨床腫瘍学会年次集会で報告され、その後も本サイトで各解析の毎にレポートしてきたTRIBE試験のサブ解析の結果である。予後解析としてのRAS 変異型、BRAF 変異型、全野生型のPFS、OSは上述の如くであり、変異のある患者は、変異のない患者に比し予後は短く、特にBRAF 変異型患者は有意に不良な結果であった。しかし、効果予測因子解析より、FOLFOXIRI + Bevは変異の有無によらず標準アームに比し上述の如く有意に生存期間を延長させることが示された。Authorらも述べているが、28名というサブ解析の限られた症例数の中とはいえ、非常に予後の悪いBRAF 変異型患者においても、PFSで2ヵ月 (HR=0.55)、OSにおいては8.3ヵ月 (HR=0.55) と明らかな生存期間の上乗せを示しており、forest plotでは、1を少々またいではいるものの、BRAF 変異を有する患者にとっては魅力的な治療と言えそうである。

(レポート:砂川 優 コメント・監修:小松 嘉人)

 

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