寄せる期待

大村 健二 先生 上尾中央総合病院 外科・腫瘍内科 顧問

大村 健二 先生

 今年1月の大腸癌研究会では、「大腸癌治療ガイドライン2014年版」が発表されました。そのなかで示されている切除不能進行・再発大腸癌に対する化学療法のアルゴリズムには、大変多くの選択肢が示されています。また、次のガイドラインにはTAS-102が組み込まれると考えられます。私たちの手に武器が増えていくなか、それらを最も効率よく使う道が示されなければなりません。

 大腸癌化学療法のアルゴリズム作成に用いられた無作為化比較試験には、主要評価項目をPFSとしたものが多数含まれています。化学療法の「力」を評価する際には妥当な設定と言えます。一方、実臨床ではOSが大きな意味を持ちます。QOLが同等であれば、生存期間をより延長する医療行為の価値が大きいことに異論はないでしょう。

 2014年米国臨床腫瘍学会年次集会では、待ちに待ったCALGB80405試験の結果が示されるでしょう。1st-line治療が、薬剤投与を終了した遥か先の生存曲線に影響を与えることに再現性があれば、そのメカニズムの解明が求められます。これまでにいくつか推論が示されていますが、いずれもまだ不十分だと思います。この現象の機序には、薬剤に対する耐性の克服、感受性の増幅の手掛かりが隠されているかも知れません。いろいろなことに思いを巡らせて、今年もシカゴからレポートをお届けします。

寺島 雅典 先生 静岡県立静岡がんセンター 胃外科 部長

寺島 雅典 先生

 米国臨床腫瘍学会年次集会は、今年50周年を迎えます。50年前といえば1964年であり、まさに東京オリンピックが開催された年です。私は小学校1年生でありながら、体操やバレーボール、重量挙げ(三宅義信選手は地元宮城県の出身)の快挙に喜び、柔道(決勝でヘーシンクに敗れた神永昭夫選手も仙台市の出身)や、マラソンでは悔しい思いをした記憶が残っています。この頃を境に我が国は高度成長期を迎え、まさに目覚ましい発展を遂げた訳でありますが、50年前の日本と米国の経済力の差は非常に大きなものがありました。それは後に米国に留学したときに痛感しました。私がボストンで住んでいたコンドミニアムは1960年代の建築でしたが、水洗トイレ、全館暖房や、地下駐車場、プールなどは当たり前の設備として当時から備わっていたとのことです。翻って我が家はといえば、未だ石炭ストーブを使用し、丹前を着用して寝ていた時代です。当然、米国では医療資源も豊富であり、この時代の米国臨床腫瘍学会の創設を期に、特に固形腫瘍の治療開発が系統的に進められるようになりました。消化器癌のkey drugである5-FUは1957年の開発ですが、今日一般的に使用されているLVとの併用療法は1980年代後半になって初めて報告されています。消化器癌に対する化学療法の歴史は未だ四半世紀に満たないことがわかります。

 今回の米国臨床腫瘍学会年次集会のテーマは「Science and Society」です。Societyが主導する、あるいは支援するscientific evidenceの構築について、今後の四半世紀を予見できるようなレポートができればと思っています。

佐藤 温 先生 弘前大学大学院医学研究科 腫瘍内科学講座 教授
弘前大学医学部附属病院 腫瘍内科 診療科長

佐藤 温 先生

 早いもので、あっという間にまたこの季節になりました。毎年、学会期間中に病院を不在にすることを受け持ちの患者さんらに伝えるのですが、多くの方が「自分にあった新しい治療を学んで無事に帰って来てください」と仰ってくださります。癌を患った多くの患者さんが新しい治療の開発を待ち望んでいることは確かなことです。同時に、ご自身もつらさを抱えているにもかかわらず、私を心配してくれる優しさにはいつも頭が下がります。今年も真摯な気持ちで積極的に学会に参加をし、少しでも患者さんに益になる進歩を学習し、そして皆さんと共有したいと思っております。

 今年の米国臨床腫瘍学会年次集会では、FIRE-3試験で投じられた切除不能進行・再発大腸癌1st-lineにおける抗EGFR抗体薬と抗VEGF抗体薬の比較結果の論争に対して、1つの結論となるCALGB80405試験が、Plenary Sessionで報告されます。FIRE-3試験は、OSでCetuximab併用群が延長していたものの、主要評価項目が奏効率であり、かつPFS曲線がほぼ同一であったことから、その結果の解釈が難しくなっておりました。今回の試験結果が実臨床に大きく影響することは間違いないと思っております。

小松 嘉人 先生 北海道大学病院 腫瘍センター 診療教授

小松 嘉人 先生

 毎年言っておりますが、早いもので、今年もまた米国臨床腫瘍学会年次集会の時期がやってきました。しかも今年は第50回の記念年次集会でもあり、従来よりもさらなる盛り上がりを見せるのではと、私自身楽しみにしています。

 今年の年次集会は話題も豊富であり、新規分子標的薬の大規模試験の結果も多数報告されるようです。胃癌ではRAINBOW試験の日本人サブ解析がOralに採択され、他にもApatinibなどの新規分子標的薬の第III相試験があり、膵癌ではRuxolitinib、胆道癌ではCediranibなど、新薬の大規模試験結果が報告されるようです。大腸癌領域では、やはり流行りのbiomarker研究について、OPUS試験や、CRYSTAL試験がOralに採択されており、更なる新しい情報が得られることが期待されます。また、待望のCALGB80405試験がPlenary Sessionに選ばれており、どのような結果になっているのか、誰もが報告を切望していると思います。この結果により、大腸癌の分子標的薬の使い方に多大なる変化が起きる可能性があり、読者の皆さんも大いに興味がわくところかと思います。

 今年も消化器癌治療の広場では、これらの興味ある演題を、シカゴに来られない皆さんにもお楽しみいただけるよう、いち早くお届けしたいと思います。最新の話題満載の第50回米国臨床腫瘍学会年次集会を皆で楽しみましょう。

演題速報
アクセスランキング

このサイトは医療関係者の方々を対象に作成しています。
必ずご利用規約に同意の上、ご利用ください。記事内容で取り上げた薬剤の効能・効果および用法・用量には、日本国内で承認されている内容と異なるものが、多分に含まれていますのでご注意ください。