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GI cancer-net 海外学会速報レポート 2013年6月 シカゴ

背景と目的

 切除不能進行・再発大腸癌における、FOLFOXIRI療法のFOLFIRI療法に対する優越性がGONOグループの第III相試験で証明されている1)。本試験では、FOLFOXIRI + Bevacizumab (Bev) 療法のFOLFIRI + Bev療法に対する優越性を第III相試験において検証した。

対象と方法

 PS 0-2の切除不能進行・再発大腸癌の初回治療例508例をFOLFIRI + Bev群 (256例) またはFOLFOXIRI + Bev群 (252例) に無作為に割り付け、それぞれ導入療法として12サイクル投与した後、維持療法として5-FU/LV + Bev療法を増悪するまで継続した (図1)

 主要評価項目はPFS (progression-free survival) であり、副次評価項目は奏効率、二次的R0切除率、OS (overall survival)、有害事象、バイオマーカー評価であった。

図1

結果

 2群間の患者背景に大きな差は認めなかった (表1)

表1

 導入療法のサイクル数中央値は、FOLFIRI + Bev群が12サイクル、FOLFOXIRI + Bev群が11サイクルであった。サイクル開始延期、減量はFOLFOXIRI + Bev群で高頻度に認められた。用量強度はそれぞれ、5-FUが83% vs. 73%、CPT-11が84% vs. 74%、L-OHPがNA vs. 75%であった。

 重篤な有害事象の頻度は、FOLFIRI + Bev群が19.7%、FOLFOXIRI + Bev群が20.4%、治療関連死亡の頻度はそれぞれ1.6%、2.4%であり、両群間でほぼ同等であった。有害事象の詳細を表2に示す。

表2

 主要評価項目であるPFS中央値は、FOLFIRI + Bev群の9.7ヵ月に対し、FOLFOXIRI + Bev群は12.1ヵ月と有意に良好であった (HR=0.77, 95% CI: 0.64-0.93, p=0.006) (図2)

図2

 サブグループ解析において、唯一FOLFOXIRI + Bev療法が不利と推測されたグループは、術後補助化学療法ありの集団であった。

 KRASBRAF 遺伝子変異はFOLFIRI + Bev群の201例、FOLFOXIRI + Bev群の205例で検査され (表3)KRAS 野生型、変異型におけるPFSのHRはそれぞれ0.84、0.83、BRAF 野生型、変異型におけるHRはそれぞれ0.55、0.83であった。

表3

 奏効率はFOLFIRI + Bev群の53%に対し、FOLFOXIRI + Bev群では65%と、有意に良好であった (p=0.006)。肝転移のみの症例における二次的切除割合はそれぞれ41%と39%、R0切除割合は28%と32%で有意差を認めなかった。

 観察期間中央値32ヵ月の時点においてOSのデータはpreliminaryであるが、OS中央値はFOLFIRI + Bev群25.8ヵ月、FOLFOXIRI + Bev群31.0ヵ月と有意差は認められなかった (HR=0.83, 95% CI: 0.66-1.05, p=0.125) (図3)

図3

結論

 FOLFOXIRI + Bev療法はFOLFIRI + Bev療法に対して、PFS、奏効率において有意に良好であった。

コメント

 本試験は2013 Gastrointestinal Cancers Symposiumにおいて、主要評価項目であるPFSの優越性の検証が報告されており2)、今回はその追加解析報告である。2007年に同グループより、FOLFOXIRIのFOLFIRIに対する奏効率 (60% vs. 34%) の有効性と同時に転移巣のR0切除率 (15% vs. 6%)、R0肝切除率 (36% vs. 12%) の向上が報告され3)、化学療法後の治癒切除を目的としたstrategyにおいて治療強度の高いレジメンに注目が集まった。

 しかし、本報告では奏効率に有意差を認めたものの、切除率に差はなかった。一方、データが未熟なためOSについては探索的な結果のみとなったものの、本レジメンの生存への寄与は十分期待できるものである。また、予後不良なBRAF 変異型症例における有効性も示された。

 本試験では、導入療法後は維持療法に移行している。毒性管理の問題はあるものの、化学療法後に切除可能な集団を有効に選別し、palliativeな集団には腫瘍縮小後に円滑に維持治療に移行できる手段と考えると有効なfront lineなのかもしれない。ただし、これまでの繰り返しになるが、実臨床に持ち込むには十分すぎる管理がまだ必要と考える。

(レポート:中島 貴子 監修・コメント:佐藤 温)

Reference
  1. 1) Falcone A, et al.: J Clin Oncol. 25(13): 1670-1676, 2007 [PubMed]
  2. 2) Fotios L, et al.: 2013 Gastrointestinal Cancers Symposium: abst #336
  3. 3) Falcone A, et al.: 2007 Annual Meeting of the American Society of Clinical OncologyR: abst #4026

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