Discussion現地座談会

切除不能大腸癌の1st-lineにおけるBevacizumabと抗EGFR抗体薬

#3535:PEAK試験
RAS 野生型大腸癌に対する1st-line治療としてのmFOLFOX6 + PanitumumabとmFOLFOX6 + Bevの抗腫瘍効果について解析

室:本セッションの最後は、BevとPanitumumabを比較したPEAK試験です。

中村:PEAK試験KRAS 野生型大腸癌患者を対象に、1st-line治療としてのFOLFOX + BevとFOLFOX + Panitumumabを比較した無作為化第II相試験です。KRAS 野生型と同様、RAS 野生型でもOSはPanitumumab群で良好であったものの、奏効率に差がなかったため、早期腫瘍縮小 (early tumor shrinkage: ETS) *1 や腫瘍縮小の深さ (depth of response: DpR) *2、効果持続期間 (duration of response: DoR) *3 などが解析されました。

 その結果、TTR (time to response) 中央値はBev群3.8ヵ月に対し、Panitumumab群2.3ヵ月と、Panitumumab群で早く腫瘍縮小が得られました (HR=0.85, p=0.4090)。また、DpR (p=0.0007)、DoR (p=0.0159) ともに有意にPanitumumab群が良好で、Panitumumab群ではより深い腫瘍縮小が、より長期間得られたことが示されました。ETSについては、8週時点で30%以上の腫瘍縮小が認められた症例が、Bev群45%に対してPanitumumab群は64%と多く、ETSを認めた症例ではより良好なPFSが得られました (表3)。
 以上より、奏効率では差はみられなかったものの、Panitumumab群では、より早く、深く、長い腫瘍縮小が認められ、OSやPFSの延長につながったと考えられるという結論でした。

室:大村先生、いかがでしょうか。

大村:抗EGFR抗体薬と抗VEGF抗体薬のhead to headの比較試験の結果が、2年ほど前から報告されています。PEAK試験ではRAS 野生型で奏効率に有意差がないにもかかわらず、PFS、OSでは抗EGFR抗体薬群で有意な延長を認め、この機序をつきとめるために、今回の解析が行われました。その結果、ETSが得られた症例はOSが良好であること、DpRが大きい症例ほどレスポンスの期間が長いことがわかり、これがPanitumumab群とBev群のOSの差をもたらしたことを示唆しています。Conversion therapyなどにおいて、より腫瘍縮小効果の高い抗EGFR抗体薬の使用を支持する結果だと思います。

佐藤 (温):ETSはこれまで20%をカットオフとしていましたが、今回30%という数値が加わった理由は何でしょうか。

吉野:RECISTにおけるPRの数値に合わせたのだと思います。20%というのは、もともとCRYSTAL試験やOPUS試験の後解析4)においてCmab群で良好となる指標として作られたものなので、今回の30%の方が根拠になるかと思います。

室:早い、深い、長いという抗EGFR抗体薬の良さが、OSの差をもたらしたという1つの根拠になるかもしれない結果ですね。

谷口:PEAK試験は第II相試験ですが、第III相試験のFIRE-3試験でも同様の結果が得られています。やはり早い奏効、深い奏効が得られることが抗EGFR抗体薬の特徴だと思います。

佐藤 (温):抗EGFR抗体薬の長期投与には皮膚障害が気になるところですが、同日に発表されていたPRIME試験の質的調整生存解析 (Q-TWiST解析) では、Panitumumab併用により副作用に悩む期間は長くなるものの、それ以上に症状などから解放された期間が延長していることが報告されていました (#3543)。

  1. *1 ETS:治療開始8週時点での腫瘍縮小率が20%もしくは30%を超えた症例の割合
  2. *2 DpR:最も腫瘍が縮小した時点、もしくは進行を認めた時点でのベースラインからの腫瘍縮小率
  3. *3 DoR:最初に効果を確認してから腫瘍増大、もしくは死亡までの期間

Lessons from #3535

  • PEAK試験では、Panitumumabの早く、深く、長い腫瘍縮小効果がBevとのOSの差をもたらしたことが示唆された。
  • Conversion therapyにおいては、より腫瘍縮小効果の高い抗EGFR抗体薬を使用した方がよいことが示唆される。

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