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Abstract #4005
局所限局食道癌に対する手術単独療法 (S群) と術前化学放射線療法+手術療法 (CRT群) の検討:無作為化第III相試験FFCD 9901
Surgery alone versus chemoradiotherapy followed by surgery for localized esophageal cancer: Analysis of a randomized controlled phase III trial FFCD 9901.
Christophe Mariette, et al.
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背景

 局所限局食道癌に対する最良の治療は外科的切除であり、局所再発、遠隔転移や予後不良であることが、術後の問題点として挙げられる。局所で進行した食道癌において、術前化学放射線療法についてはしばしば研究がなされているが、壁進達度の浅い癌での効果は知られていない。今回の無作為化第III相試験では、stage IもしくはIIの食道癌で、術前化学放射線療法が治療成績を改善するのかを検討した。

対象と方法

 一次エンドポイントをoverall survival (OS) とした。また、二次エンドポイントはdisease-free survival、術後合併症と死亡率、R0切除率、予後予測因子同定とした。OSを35% (S群) から50% (CRT群) に上げるデザインでは、α=5%、検出力80%、182例の症例が必要であったが、2000年6月から2009年6月までに30施設から195例の症例が登録された。97例がS群に、98例がCRT群に分けられた。術前化学放射線療法は、45Gy/25F/5週の照射に同時に2コースの化学療法 (5-FU 800mg/m2/日、day1-4、cisplatin 75mg/m2、day1or2) を加えたものである。

結果

 患者や腫瘍背景は2群間で相違はなかった。患者の術前ステージはI:18%、IIA:49.7%、IIB:31.8%、不明:0.5%であった。術後合併症はS群49.5%、CRT群 (p=0.17)、30日以内死亡率はS群1.1%、CRT群7.3% (p=0.054) であった。中間観察期間5.7年後の段階で106例の死亡が認められ、中間生存はS群44.5ヵ月、CRT群31.8ヵ月 (HR=0.92、95%CI:0.63-1.35、p=0.66) であった。その結果、術前CRTはベネフィットがないという判断のもとに、試験が中止された。

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結論

 Cisplatinと5-FUの術前化学放射線療法ではOSの改善はみられなかった。その上、手術単独療法より術後死亡率を上げる結果となった。

コメント

 Abstract #4004と一転して、食道癌に対する術前化学放射線療法を否定する報告である。対象とした病期や使用した抗癌薬が異なるため、一概に二つの演題の結果を比較はできない。本研究では、CRT群に術死率の大幅な増加がみられ、そのまま3年OSの差となっている。壁深達度の浅い腫瘍では、術前化学放射線療法による食道切除の難易度の増加は少ないと考えられる。一方、用いられたFPは5-FUの投与日数が週に4日ではあるものの、5-FUとcisplatinの1回投与量はJCOG 9907とほぼ同じである。放射線療法との併用としてはややheavyであった可能性はある。より重篤な合併症がCRT群で多く、それを術後管理でカバーできなかった可能性が考えられる。

(レポート:家接 健一 監修・コメント:大村 健二)

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