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Abstract #4061
JCOG 9205、JCOG 9912試験統合解析 : 切除不能進行・再発胃癌初回化学療法不応例における生存期間延長に関する探索研究
Survival prolongation after treatment failure in patients with advanced gastric cancer (AGC) : Results from combined analysis of JCOG9205 and JCOG9912.
Atsuo Takashima, et al.
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背景

 JCOGでは、切除不応進行・再発胃癌初回治療例を対象に、5-FU持続静注療法を対照群とした2つの無作為化比較第III相試験 (JCOG 9205、JCOG 9912試験) を行った。各試験の5-FU持続静注療法群のoverall survival (OS) は、JCOG 9205試験よりもJCOG 9912試験が良好であり (OS中央値7.1ヵ月、10.8ヵ月)、二次治療の進歩がOSの延長に寄与した可能性が考えられるものの、明確ではない。
 今回、両試験の患者背景を調整したうえで、JCOG 9912試験の予後が良好であるかどうかを評価し、二次治療と初回治療不応後のOSとの関連を検討する。

対象と方法

 JCOG 9205、JCOG 9912の両試験で5-FU持続静注療法群に割り付けられた症例。

・エンドポイント : OS、TTF (time to treatment failure:治療成功期間)、初回治療終了後のOS (OS-TTF)、二次治療の施行率とレジメン。
・患者背景の調整因子 : 年齢 (<65/≧65)、性別 (男/女)、PS (0/1/2)、肉眼型 (0/1/2/3/4/5)、組織型 (分化型/未分化型)、胃切除の有無、標的病変の有無、腹膜転移の有無、転移臓器個数 (0/1/2)。
結果

 JCOG 9205試験より89例、JCOG 9912試験より230例が解析対象となった。OSはそれぞれ204日、327日 (HR=0.63、95%CI:0.49-0.81)、TTFは60日、72日 (HR=0.83、95%CI:0.65-1.08)、OS-TTFは128日、205日 (HR=0.63、95%CI:0.49-0.82)、治療中止理由は両群でほぼ同じであった。患者背景を調整したHRはOSが0.74 (95%CI:0.56-0.99)、TTFが0.95 (95%CI:0.73-1.26)、OS-TTFが0.76 (95%CI:0.57-1.01) であった。
 二次治療が施行された症例はそれぞれ46例 (52%)、190例 (83%) であり、irinotecanまたはtaxane系薬剤、S-1のいずれかが使用されたのは9例 (10%)、178例 (77%) とJCOG 9912試験で多かった。二次治療未施行例のHRはOSが1.29 (95%CI:0.71-2.34)、TTFが0.92 (95%CI:0.51-1.65)、OS-TTFが1.37 (95%CI:0.74-2.53)、二次治療施行例のHRはOSが0.61 (95%CI:0.43-0.87)、TTFが0.85 (95%CI:0.60-1.22)、OS-TTFが0.66 (95%CI:0.46-0.95) であった。

OS-TTF

2nd-line Chemotherapy

結論

 本検討の結果より、新規薬剤 (irinotecan、taxane系薬剤、S-1) による二次治療がOS-TTFの延長に寄与した可能性が示唆された。しかしながら、ほかの可能性として、JCOG 9912試験において二次治療開始時のPSが良好であった可能性やJCOG 9912試験でより早期に治療中止の判断がなされた可能性、支持療法が進歩したことも考えられた。今後、二次治療の効果を明らかにするためには、二次治療開始時の患者背景の情報収集や治療中止判断の中央判定などの方法が必要であろう。

コメント

 1990年代と2000年代にJCOGで実施された進行・再発胃癌に対する代表的な臨床試験において、対照治療として設定された5-FU持続静注療法群の成績をもとに、その後の二次治療の寄与に関して推測した興味深い研究である。
 改めて二つの試験を比較してみると、9205試験ではPS2の症例が多く、9912試験では腹膜転移の症例が多いなど、おそらく時代背景を反映したと考えられる患者背景因子の差が認められている。しかし、背景因子の違いを考慮したとしても、両試験間のOS-TTFの差は非常に大きい。二次治療に使用された薬剤が9205試験では約半数の症例で5-FU/MTXであるのに対し、9912試験ではirinotecan、taxane系薬剤、S-1、S-1/CDDPが77%を占めていることを考慮すると、感覚的には二次治療の関与が最も大きいものと考えられる。
 発表者が結論で述べているように、一次治療中止理由の中央判定、二次治療開始時の背景因子の情報収集などによって、二次治療の効果をさらに明確に判定することが可能になるものと思われる。我が国で長期間にわたって症例集積がなされた精度の高い貴重な臨床試験の結果であり、より詳細な解析が実施されることを期待する。また、今後行われる臨床試験では、常に後治療の影響を評価する情報を前向きに収集すべきであると思われる。

(レポート:山崎 健太郎 監修・コメント:寺島 雅典)

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