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Abstract #CRA3507
KRAS 野生型のstage III結腸癌に対する術後補助化学療法としてのmFOLFOX6±cetuximab療法による治療効果の検討:NCCTG intergroup 第III相試験N0147
Phase III clinical trial of FOLFOX with or without cetuximab in resected KRAS wild type stage III colon cancer:Cooperative group trial N0147
Steven R. Alberts, et al.
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Abstract #3508
KRAS 変異型のstage III結腸癌に対する術後補助化学療法としてのmFOLFOX6±cetuximab療法による治療効果の検討:NCCTG intergroup 第III相試験N0147
Adjuvant mFOLFOX6+/-cetuximab in patients with KRAS mutant resected stage III colon cancer:Cooperative group trial N0147
Richard M. Goldberg, et al.
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背景

 FOLFOXは、stage III結腸癌に対する術後補助化学療法の標準治療である。KRAS野生型の進行・再発大腸癌では、cetuximabの上乗せによってさらなる治療効果が得られることが確立されている。
 本試験では、術後補助化学療法におけるFOLFOXに対するcetuximabの上乗せ効果を評価した (#CRA3507)。なお、本試験は当初KRAS statusに関係なく症例登録を行っていたことから、KRAS変異症例についても毒性および治療効果を検討した (#3508)。

方法

 患者の同意を得て、術後21-56日のうちにKRAS遺伝子検査を実施した。KRAS野生型と判定された患者をmFOLFOX6群およびcetuximab併用群に無作為に割り付けた。
 mFOLFOX6療法としては、oxaliplatin 85mg/m2 (day1)、LV 400mg/m2および5-FU 400mg/m2 静注 (day1)、5-FU 2,400mg/m2 46時間持続点滴 (day1-2) を隔週で12サイクル行った。Cetuximabはloading doseとして400mg/m2 を1サイクル目のday1に投与し、その後は250mg/m2 (day1、8) を投与した。
 一次エンドポイントは3年disease-free survival (DFS)、二次エンドポイントはoverall survival (OS) および毒性とした。

結果

KRAS 野生型 (#CRA3507)

 KRAS野生型1,864例がmFOLFOX6群 (909例) とcetuximab併用群 (955例) に無作為に割り付けられた。本試験は、検討予定数の50%の症例に対する中間解析においてcetuximabの上乗せ効果が認められなかったため、中止された。追跡期間中央値は23ヵ月であった。
 3年DFSは、mFOLFOX6群がcetuximab併用群よりも良好であった (mFOLFOX6群:75.8%、cetuximab併用群:72.3%、HR=1.2、95%CI:0.96-1.5、p=0.22)。OSについてもcetuximabの上乗せ効果は認められなかった。
 年齢別の解析では、特に高齢患者におけるcetuximab併用群のDFSが低いことが示された。

Forest Plot for DFS

 Cetuximab併用群では、mFOLFOX6群に比べてgrade 3以上の皮疹、下痢、好中球減少などの有害事象の発現率が高かった。治療完遂率はcetuximab併用群で有意に低かった (mFOLFOX6群:78%、cetuximab併用群:67%、p<0.0001)。
 また、mFOLFOX6群では治療完遂率に年代間の差がほとんどみられないのに対し (60歳未満:77.9%、60-69歳:78.9%、70歳以上:77.8%)、cetuximab併用群では70歳以上の治療完遂率がきわめて低かった (70.2%、67.0%、51.1%)。

KRAS 変異型 (#3508)

 KRAS変異型717例を対象に解析を行った。mFOLFOX6群が374例、cetuximab併用群が343例であった。3年DFS、OSおよび治療完遂率は有意ではないものの、mFOLFOX6群でcetuximab併用群よりも良好な傾向にあった。

Results of KRAS MT
結論

 本試験では腫瘍のKRAS statusにかかわらず、stage III結腸癌の術後補助化学療法におけるmFOLFOX6に対するcetuximabの上乗せ効果は認められなかった。

コメント

 2009年の米国臨床腫瘍学会年次集会では、NSABP C-08試験の結果によってstage II/III結腸癌に対する術後補助化学療法におけるmFOLFOX6へのbevacizumabの上乗せ効果が否定されたが、今回報告された結果を合わせ、結腸癌の術後補助化学療法で抗体製剤は連敗を喫した。KRAS変異の有無にかかわらず、DFS、OSの曲線ともにmFOLFOX6単独群がcetuximab併用群の上を行っていた。Cetuximabを加えることにより、特に高齢者で化学療法のコンプライアンスが低下することが強調されていたが、それだけでは説明できないものもあった。 切除不能進行・再発大腸癌に対する化学療法では確固たる地位を築いた抗体製剤であるが、術後補助化学療法ではその有用性を証明することはできなかった。
 これまでは、切除不能進行・再発癌に対する化学療法に有用であったレジメンを術後補助化学療法に用い、その有用性を検証するという手法が用いられてきた。しかし、延命を求める前者と治癒率の向上を求める後者とは、用いる薬剤の作用機序によっては別個に考える必要があることを示唆する結果であった。

(レポート:家接 健一 監修・コメント:大村 健二)

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