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Abstract #3502
MRC COIN試験 (pIII):FOLFOX/XELOX + cetuximab併用療法による治療効果が期待できるサブセットについて
Identification of potentially responsive subsets when cetuximab is added to oxaliplatin-fluoropyrimidine chemotherapy (CT) in first-line advanced colorectal cancer (aCRC): Mature results of the MRC COIN trial.
Timothy Stanley Maughan. et al.
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背景

 MRC COIN試験は、進行再発大腸癌における1st-line治療としてのoxaliplatin (L-OHP) + fluoropyrimidine (5-FU/LVまたはcapecitabine) 療法に対するcetuximabの上乗せ効果を比較・検討した無作為化第III相比較試験である。すでにnegativeな結果が報告されており、サブセット解析での詳細が求められている。

対象と方法

 MRC COIN試験ではベースとなるoxaliplatin (L-OHP) + 5-FU/LV (q2w) [FOLFOX療法] またはL-OHP + capecitabine (q3w) [XELOX療法]を医師が自由に選択した後に、Arm A:FOLFOX/XELOXとArm B:FOLFOX/XELOX + cetuximabに無作為に割り付けている(2010年 消化器癌シンポジウム Abstract #402)。今回FOLFOX/XELOX + cetuximab併用療法による治療効果が期待できるサブセットについて検討した。対象は測定可能病変を有する切除不能大腸癌で、WHO PS 0-2、臓器機能が保たれているなどの適格基準に当てはまる患者であった。

  • 一次エンドポイント:OS (KRAS野生型)
  • 二次エンドポイント:OS (KRAS変異型、KRAS/NRAS/BRAFのすべてが野生型、KRAS/NRAS/BRAFのいずれかが変異型)、progression-free survival (PFS)、response rate (RR)、QOLなど
  • 結果

     Arm A(815例)、Arm B(815例)の1,630症例が登録され、1,316症例(81%)で、KRASが測定できた。そのうち729例(55%)がKRAS野生型であった。KRAS野生型の中での変異状況は、すべて野生型44%、KRAS変異型43%、BRAF変異型8%、NRAS変異型4%であった。
     KRAS野生型におけるArm AおよびArm Bの間でOS、PFSのいずれも有意差は認めなかった。

    OS(primary analysis)and PFS among KRAS wild-type patients

     KRAS/NRAS/BRAFの全てが野生型である症例、および、KRAS/NRAS/BRAFのいずれかが変異型である症例においても、Arm AおよびArm Bの間でOSに有意差は認めなかった。

    Overall survival:by mutation status:KRAS,NRAS,BRAF

     しかしながら、OSは、BRAF変異型<いずれかの変異型<KRAS変異型<KRAS野生型<すべての野生型、の順となり、変異状況によってOSに差が認められる傾向にあった。

    Prognostic effect of mutational status

     RRにおいては、Arm Aが57%、Arm Bが64%とcetuximab追加による上乗せ効果を認めた(p=0.049)。サブセット解析では、転移部数が1以下の場合、およびFOLFOX症例において、cetuximab追加による上乗せ効果が認められ(図1)、特にKRAS野生型の症例に有意差が認められた(図2)。

    Prognostic Subgroup analyses

    図2

     XELOX + cetuximab投与症例ではgrade 3以上の消化器毒性の頻度が高かったため途中でプロトコール変更をし、capecitabineを1,000→850mg/m2、1日2回投与に減量した。これにより消化器毒性は軽減したが、Dose-Intensityは低下したため、有効性において有意差が出なかったと考えられた

    結論

     FOLFOX/XELOX療法にcetuximabの追加は、KRAS野生型の症例でOSまたはPFSを改善しなかった。しかしながらKRAS野生型の中で、転移部数が1以下の場合、およびFOLFOX投与症例において上乗せ効果が認められた。

    コメント

     昨年のESMOの報告に引き続いて今回はCOIN試験のサブ解析データを報告している。本試験は大腸癌一次治療のFOLFOX/XELOX療法に対するcetuximab併用の意義を問う第III相試験である。生存曲線、PFS曲線ともに、両群ほぼ重なった要因として、XELOXの影響をあげている。Capecitabineは試験途中で下痢の発現に対して減量投与となっており、Dose-Intensityの低下を招いている。このプロトコール変更で行った減量はXELOX±bevacizumabとFOLFOX±bevacizumabを比較したNO16966試験および本邦でのXELOXの承認用量からみても低い用量となっており、確かに効果に影響が出るだろう。ちなみに、cetuximabと同じ抗EGFR抗体(ヒト抗体)のpanitumumabとFOLFOXとの併用を検討したPRIME試験では有意なPFSの延長が認められている。本試験は決してcetuximabおよびXELOX療法そのものを否定するものではなく、毒性の面からそれぞれの相性の悪さについて考える機会となった。また、二次治療の移行率も両群約半数と少ないのは、英国の保険事情も絡んでいるのではないかと憶測せざるを得ない。海外データの解釈の困難さを実感する。

    (レポート:松阪 諭 監修・コメント:佐藤 温)

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