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Abstract #4004
切除可能な食道および食道胃接合部癌患者の生存に与える術前化学放射線療法の効果 :多施設共同無作為化第III相試験
Effect of preoperative concurrent chemoradiotherapy on survival of patients with resectable esophageal or esophagogastric junction cancer: Results from a multicenter randomized phase III study.
Ate Van Der Gaast, et al.
背景

 発表者らのグループは、切除可能な食道癌患者に対する術前化学放射線療法 (CRT) の第II相試験を実施し、CRTは忍容性が高く、かつ根治切除の可能性を高める治療であることを報告した1)。今回は、前述の第II相試験の結果を踏まえ、食道および食道胃接合部癌に対する術前化学放射線療法および手術単独の治療成績の無作為化比較第III相試験が行われた。

1) Meerten EV, et al.; Br J Cancer. 94: 1389-1394, 2006

対象と方法

 切除可能な食道および食道胃接合部癌 (T2-3、N0-1、M0) の患者を対象に、CRT [化学療法 (paclitaxel 50mg/m2、carboplatin AUC=2/週を5サイクル) +同時放射線治療 (41.4Gy/1.8Gyを週5回、計23回照射) を行って6週間以内に手術した群と手術単独群に分けて比較した。また、PS、組織型、リンパ節転移状況による層別化も行った。

結果

 2004〜2008年の期間に363例が登録された。年齢中央値60歳 (36-79)、WHOのPS中央値0 (0-1)、腺癌/扁平上皮癌/その他は273/86/4例であった。また、男性の割合は手術単独群が81%、CRT+手術群は75%であった。
 CRT+手術群のgrade 3以上の血液毒性は白血球減少が6.8%であった。非血液毒性は16%に認められたが、すべて5%未満であった。
 切除可能であった症例は、手術単独群が188例中162例 (86%)、CRT+手術群は175例中158例 (90%)であった。R0手術はCRT+手術群で92.3%、手術単独群で67%であった (p<0.002)。CRT後の原発巣のpCR率は32%であった。
 在院死亡率は手術単独群で3.7%、CRT+手術群で3.8%であった。観察期間中央値32ヵ月の時点で、死亡例はCRT+手術群で70例、手術単独群で97例であった。
 Overall survival (OS) はCRT+手術群の方が有意に良好であり (HR=0.67、 95%CI:0.50-0.92、p=0.011)、MSTはCRT+手術群が49ヵ月、手術単独群が26ヵ月であった。また、1年生存率、2年生存率、3年生存率はCRT+手術群が各82%、67%、59%、手術単独群が70%、52%、48%であった。

Follow-up and survival

 層別化による解析では、PS、組織型、リンパ節転移状況のいずれにおいても、CRT+手術群の方が優っていた。

結論

 Paclitaxel+carboplatinのweeklyレジメンによる術前化学放射線療法を行うことで、手術単独に比べてOSの改善がみられ、術後の合併症や死亡例が増加することもなかった。このレジメンは切除可能な食道癌および食道胃接合部癌に対する標準治療と考えられる。

コメント

 我が国では、食道癌に対する化学療法の中心はFP療法 [cisplatin(CDDP)+5-FU] である。また、FP療法を用いた術前補助化学療法は、術後補助化学療法と比較して良好な成績が得られた (JCOG 9907)。FP療法が用いられてきた背景には、食道は胃に連続する消化管であるという肉眼解剖的発想があったと考えられる。しかし、発生学的に食道は気管と同じ前腸 (foregut) 由来である。paclitaxel+carboplatinのように肺癌に対して有効なレジメンは食道癌にも有用なはずである。本研究結果は、食道の発生学的背景に裏付けられているように思われてならない。

(レポート:家接 健一 監修・コメント:大村 健二)

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