最終日の午後には、5日間の研修を振り返る総括が行われた。ここでは、それぞれの施設が現在抱えている問題点を洗い出し、その問題点を改善するために、研修で身につけた知識や技術を生かして、どのように取り組んでいくのかを発表する(図4)。
 まず医師からは、「医師間の副作用に対する減量や変更の基準が統一されていない」、「レジメン登録がなされていない」などが現在の問題点として挙げられた。
 それに対し、総括を担当した水沼先生からは、次のようなアドバイスがあった。
 「副作用への対応は、ほかの医師も含めて統一した対処ができるように、マニュアルを作成したほうがよいですね。この問題に限らず、医師が仕事を抱え込むのではなく、薬剤師や看護師にも職能に応じた責任ある仕事をしてもらうため、マニュアルを積極的に作成するといいと思います」と述べた。また、レジメン登録については「レジメンは、エビデンスのレベルで絞って、登録する必要があります。それによって、かなり効率化が図れるはずです。薬剤師の果たせる役割は大きいと思うので、薬剤部が積極的に進めてください」と勧めた。
 次に、薬剤師からは「薬剤師によるミキシングや服薬指導が行えていない」という問題点が報告された。それに対し、水沼先生は「まずは、薬剤師がミキシングを行うようにしてください。服薬指導も大切ですが、一度に多くのことを始めるのは難しいので、優先順位をつけるとよいと思います」とアドバイスした。
  看護師からは、「外来化学療法に関わる医療スタッフの連携が不十分」、「3職種を含めたカンファレンスを開いていない」、「患者指導で医師と看護師で内容の打ち合わせができていない」など、主に医療スタッフ間の情報共有、コミュニケーション不足が問題点として報告された。
 まず、多職種間のカンファレンスについては、「外来化学療法のカンファレンスが月に1回では少なすぎます。週1回でやったほうがいい。医師が多忙なら、医師が不在でも開いて、後で医師の承認を得る方法もあります」と、情報共有の場をできるだけ多く設けることを勧めた。また、患者指導については「医師と看護師が患者指導を担当しているなら、指導する内容を統一しておかなければ。製薬会社の患者用パンフレットには、わかりやすく解説されているものがあるので、それに合わせて説明ができるようにするのも手間がかからなくていいでしょう。いつも同じ言葉で説明することが大切です」と、煩雑な業務の中で仕事を増やさずに、効率的な患者指導を行うことの重要性を強調した。
 こうして各施設の問題点とその改善策について話し合い、5日間の研修は終了した。最後に、水沼先生は次のように語った。
「この研修では、新しい治療を導入するための知識や技術を学んでもらいました。しかし、新しい治療のために、仕事を増やしてほしいとは思っていません。我々が提案したいのは、仕事を効率化して無駄を省き、仕事の量を減らしてもらうことです。それが、新しい治療法を積極的に導入することにつながると信じています」
 この研修では、癌研有明病院の効率化した医療を学ぶこともできる。医療スタッフの数が大幅に不足している現在、新しい治療法を導入し、常に最善の医療を提供していくためには、業務の効率化を図ることも欠かせない要素なのだろう。

図4 現在抱えている問題点と改善策