大腸癌の外来化学療法の習得を目的とした短期研修は、通常、月曜日から金曜日までの5日間で行われる(図1)。毎回、研修には2施設が参加する。今回参加していたのは、宮崎県の都城市郡医師会病院と埼玉県のさいたま市立病院だ。
  この研修には、各施設から、医師、薬剤師、看護師の3職種が参加することになっている。両施設とも、医師、薬剤師、病棟看護師、外来看護師の4人が参加していた。

図1 研修カリキュラム

 研修は、癌研有明病院・外来治療センター長である畠清彦先生の挨拶を兼ねた講義で始まった。畠先生は、講義の冒頭でこう話している。
「日本では、新規抗癌剤・分子標的薬の日常診療への導入が遅れる傾向にあります。発売後2年も3年も経って、未だに導入されていないという施設もあります。欧米では、新薬が上市され、以前からある薬より有効であるというエビデンスが報告されると、新薬を使っていないだけで訴えられたり、保険が適用されなかったりということが起こります。日本でも標準治療は定められていますが、“標準治療を提供しなければ”という考えが薄いようですね」
  こうした状況を改善していくためには、臨床における新規薬剤の使用法を見学できる、実践的な研修が必要になる。今回の研修は、FOLFOX4とベバシズマブの併用レジメンの習得を中心に、今後新たに承認される分子標的薬も視野に入れながら、それらを日常診療に導入することを主な目標として行われた。
 畠先生は、さらにこう続けた。
「研修というと、ただ勉強するだけという印象があるかもしれませんが、私たちが目指しているのは、そういった研修ではありません。ただ知識を増やして帰るのではなく、次の週から、ここで学んだ標準治療を、自分たちの病院で実際に始められるようにする。さらに、近隣の施設を集めて、ここで学んだ内容について研修会を開いてもらい、地域全体の底上げを図る。それを目指しています」
 畠先生のこの講義によって、研修の目指すところが明確になった。

畠先生の講義風景
参加施設に配布される研修資材