FOLFOXには48時間の持続点滴が含まれるが、患者さんのQOLを考えれば、外来化学療法が必要になる。だが、一般的な病院では、外来での化学療法に苦労していることが多い。畠先生によれば、癌研でも、外来化学療法は初めからうまくいっていたわけではなかったようだ(図2)。
「私が癌研に赴任したのは2000年ですが、外来治療センターは、1994年に11床でスタートしていました。そのころは、看護師も専任ではなく、手の空いているスタッフがやっていたようです。私が赴任してきたときも、まだ11床で、月間の患者数は200人程度。1日に10人くらいの患者さんだったわけです」
 2000年当時、癌研は東京・大塚にあり、正式名称を「癌研究会附属病院」といった。当時の在院日数は、60〜140日だったという。それが現在では、病院全体の平均で、17日にまで短縮されている。これだけ大幅に短縮されたのは、化学療法が入院から外来へと変化したことが大きかったようだ。
「2000年以降、外来治療センターは徐々に拡張していきました。16床に増やしたときに専任の看護師をつけてもらいました。次に26床に増やして、看護師も4人に増えました。2005年に有明に移転したときが、34床で看護師10人。ところが、これもすぐに満杯になって、2007年8月に60床に増やしました。すでに60床がすべて埋まったことが6回あり、そのときは1日の患者数が180人を超えています。つまり、かつての1ヵ月の患者数を、たった1日でこなせるようになっているのです」
 外来化学療法は患者さんのQOLを高めるだけでなく、病院にも大きな影響をもたらすことになる。癌研有明病院のノウハウを学ぶ意味はここにあるといってよいだろう。

図2 癌研病院における大腸癌化学療法の変遷