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インフュージョンリアクションとアレルギー反応  監修:谷口浩也先生(国立がん研究センター東病院)

 癌化学療法に伴う過敏性反応にはインフュージョンリアクション(輸注反応、Infusion Related Reaction: IRR)と即時型のアレルギー反応が挙げられる。IRRとは分子標的薬をはじめとしたタンパク製剤投与時に多く発現する有害反応を指し、アレルギー反応とはIgE抗体を中心とした免疫応答が関与するI型の過敏反応を指す。

症状と発現機序

症状

 IRRの症状1)は非特異的なものが多く、明確な診断基準はない。そのため、典型的な症状である発熱や悪寒、発疹、呼吸困難感、血圧低下から総合的に判断し、IRRとして対応を行う。代表的な分子標的薬剤のIRR発現頻度と重篤度を表1に示した。多くは軽度〜中等度の症状で経過し、重篤化する症例は少ない。アレルギー反応も同様の症状がみられるが、蕁麻疹や潮紅、喉の絞扼感、呼吸困難感はアレルギー反応に多くみられる傾向があり、重症例では喘鳴や意識消失、循環不全等を伴う。

表1:各分子標的薬剤のIRR発現頻度(殺細胞性抗癌剤併用含む)2)
表1

発現機序

 IRRの発現機序については詳細については明らかにされていないが、通常の抗癌剤によるアレルギー反応とは別のメカニズムによって生じると考えられている。一般的には、分子標的薬自身とその標的分子や血液中の各種細胞、腫瘍細胞間での相互作用により、サイトカインの放出が惹起されることによる発生機序が考えられており、放出されたサイトカインが全身循環により拡散されるため、特徴的でさまざまな症状が出現する。また、サイトカインの放出量が多い場合には症状が重篤化する。
 IRR発現はタンパク製剤である分子標的薬に多く認められるが、特にヒト化がなされていない、いわゆる異種タンパク製剤であるRituximabやCetuximab等のヒトマウスキメラ抗体でその発現リスクは高く、完全ヒト型抗体であるほどその発現リスクは低下する(表1)
 IRR発現に関する患者側因子としては、アレルギー疾患の既往、呼吸不全の合併などが挙げられている4,5)
 アレルギー反応はIRRと異なり、抗癌剤の分子構造や構成物質が抗原として認識された場合にI型アレルギー、もしくは即時型過敏症としてIgEを介したヒスタミンやロイコトリエン、プロスタグランジン等の遊離により生じる。また、Cetuximabではその発現リスクとしてGalactose-α-1,3-glactoseに対するIgE抗体の保有やマダニ咬傷歴の地域差等が報告6)されている。発現リスクのある薬剤として、タキサン系やプラチナ製剤がよく知られている。表2に各種プラチナ製剤のアレルギー反応の頻度と特徴を示した。

表2:プラチナ製剤のアレルギー発現頻度7)
表2
発現時期と経過

 IRRは抗原としての感作を必要とせず発症するため、ほとんどが初回投与時、かつ投与開始から24時間以内に生じるとされている2)。Trastuzumabでは初回には40%の発現率を示すが、次回以降の発現率は大幅に低下する8)。CetuximabでもIRR発現の約90%は初回投与時であった9,10)。また、投与薬物の投与速度がIRRの発現率に影響する場合もある。
 一方、アレルギー反応では薬剤により発現時期が異なるケースが存在し、タキサン系ではその多くが初回時に発現するのに対し、プラチナ系薬剤では投与経験後に発現がみられるケースが多い4,7)。岩本らは、CBDCAのアレルギー発生素因について一回投与量と休薬期間(PFI)について報告11)している。また、投与後の症状発現までが早いほうが重篤化しやすく、重篤化すれば気管支痙攣や血圧低下などの循環不全を伴い致死的になりうるため、可能な限り早期の段階での発見、対応が望まれる。

Grade分類

 IRRやアレルギー症状に明確な診断基準はないが、一般的には表3表4に従いgrade分類がなされている。疑われる症状の発現時には下表を参考に実際の症状から総合的に判断する。

表3:注入に伴う反応(CTCAE v4.0-JCOGより)
表3
表4:アレルギー反応(CTCAE v4.0-JCOGより)
表4
発現しうるレジメン

 IRRは分子標的薬剤、アレルギー反応ではタキサン系やプラチナ製剤でその発現頻度が高い。

【IRR】
胃癌
Trastuzumabを含むレジメン
Ramucirumabを含むレジメン、もしくは単剤
大腸癌
Bevacizumabを含むレジメン
Ramucirumabを含むレジメン
Cetuximabを含むレジメン、もしくは単剤
Panitumumabを含むレジメン、もしくは単剤
Afliberceptを含むレジメン
食道癌
・Cetuximabを含むレジメン

【アレルギー反応】
胃癌
CDDPを含むレジメン
L-OHPを含むレジメン
Paclitaxel(PTX)を含むレジメン
大腸癌
L-OHPを含むレジメン
食道癌
・CDDPを含むレジメン

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