PRIME試験の初回解析、最終報告とOSのupdate解析
PRIME試験は切除不能大腸癌の1st-line治療におけるFOLFOX4 ± Panitumumabの無作為化比較第III相試験です。
2010年に報告された初回解析では、KRAS 野生型[KRAS exon 2 (codon 12, 13) 野生型]において、主要評価項目PFS (progression-free survival) 中央値はFOLFOX4群8.0ヵ月、Panitumumab併用群9.6ヵ月であり、Panitumumab併用群で有意に良好でした (HR=0.80, p=0.02)。一方、OS (overall survival) 中央値はFOLFOX4群19.7ヵ月、Panitumumab併用群23.9ヵ月と、Panitumumab併用群で良好な傾向でしたが、有意差は認められませんでした (HR=0.83, p=0.072)。これは主要評価項目がPFSであったため、解析時点のOSイベント発生率が54%と低かったことが影響していると考えられます。
今回の米国臨床腫瘍学会ではOSイベント発生率82%におけるOSのupdate解析が報告され、Panitumumab併用群でのOSの有意な延長が示されました (HR=0.83, p=0.027) (図1) (表1)。また、サブグループ解析において、既報と同様にECOG PS 2の症例以外では、Panitumumab投与によるbenefitが得られることが認められています。つまり、KRAS 野生型の切除不能大腸癌に対するFOLFOX4とPanitumumabの併用は、PFS (HR=0.80, p=0.01:最終報告)、奏効率 (p=0.02:最終報告)、OS (HR=0.83, p=0.027:OSのupdate解析) のいずれも有意に改善することが認められたことになります。
クロスオーバーがOSに与える影響
PRIME試験の長期追跡の結果、KRAS 野生型切除不能大腸癌の1st-lineにおいてPanitumumab併用によりOSの有意な延長が認められましたが、Panitumumabの有効性を評価するには、2nd-line以降の後治療についても検討する必要があります。最終報告における解析では、後治療としてPanitumumab併用群の13% (平均21.5ヵ月後)、FOLFOX4群の25% (平均15.6ヵ月後) に抗EGFR抗体薬が投与されていました。そこで、FOLFOX4群における抗EGFR抗体薬使用の潜在的な影響を除くため、IPCW (inverse probability of censoring weighted) 解析により、クロスオーバーを行わなかった集団を再構成しました。そして、後治療での抗EGFR抗体薬使用例を除いてFOLFOX4群とPanitumumab併用群を比較した結果、OSのHRは0.74 (95% CI: 0.56-0.97) でした1)。
また、2nd-lineにおいてFOLFIRI + PanitumumabとFOLFIRIを比較した20050181試験でも同様の解析を行ったところ、OSのHRは0.71 (95% CI: 0.53-0.94)と、PRIME試験と同等の結果が得られました (表2)。つまり、クロスオーバーの影響を除けば、本来あるべきOSの差が認められたと考えられました。
新たなバイオマーカー“RAS ”
本学会ではPRIME試験におけるKRAS /NRAS、BRAF 変異の解析も報告されます。KRAS exon 2だけでなく、KRAS exon 3, 4、NRAS exon 2, 3, 4、BRAF exon 15にまで拡大して追加解析を行った結果、KRAS、NRAS すべて野生型であるRAS 野生型において、PFS中央値はFOLFOX4群7.9ヵ月、Panitumumab併用群10.1ヵ月 (HR=0.72, p=0.004)、OS中央値はそれぞれ20.2ヵ月、26.0ヵ月と (HR=0.78, p=0.043) (図2)、いずれもPanitumumab併用群で有意に良好でした。一方、KRAS exon 2野生型でその他のRAS 変異型の場合、PFS (HR=1.28, p=0.326)、OS (HR=1.29, p=0.305) ともにPanitumumab併用群で不良な傾向にありました。
RAS 野生型における結果はKRAS exon 2のみを対象とした解析に比べPanitumumabのbenefitがより顕著となり、新たな効果予測因子として期待されます。