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GI cancer-net 海外学会速報レポート 2013年6月 シカゴ

背景と目的

 PRIME (20050203) 試験は、前治療のない切除不能進行・再発大腸癌患者を対象にPanitumumab (Pmab) + FOLFOX4とFOLFOX4単独をKRAS exon2の変異状況別に比較するオープンラベルの無作為化第III相試験である1)。初回解析 (54%のOSイベント時点) および最終解析 (68%のOSイベント時点)2)において、Pmab + FOLFOX4は忍容性が良好であり、FOLFOX4単独と比べて主要評価項目であるPFSを有意に改善したが、KRAS 野生型の症例でもOSの有意な上乗せは認めなかった。また、KRAS 変異型症例では、FOLFOX4に比べ、Pmab + FOLFOX4の治療効果が下回る傾向がみられた。

 今回、探索的に、最も成熟したOS解析としてのアップデートした結果 (82%のOSイベント) が報告された。

対象と方法

 今回の解析では、2013年1月24日をデータカットオフとしてOSと安全性に関するデータが更新された。患者は、Pmab (6.0mg/kg, 2週毎) + FOLFOX4またはFOLFOX4単独に1 : 1で無作為に割り付けられた。主な適格基準は、未治療、ECOG PS2以下、バイオマーカー解析のために腫瘍組織提出可能、などであった。Log-rank test、COX比例ハザードモデルによる解析を行うとともに、定量的交互作用検定でKRAS exon2野生型と変異型のOSに対する試験治療 (Pmab + FOLFOX4) の影響の大きさについても比較が行われた。

 

結果

 KRAS exon2野生型656例、変異型440例が解析対象となった。KRAS exon2野生型症例のOS中央値は、FOLFOX4群の19.4ヵ月に対し、Pmab + FOLFOX4群では23.8ヵ月と、有意な延長が認められた (HR=0.83, p=0.027) (図1)。一方、KRAS exon2変異型症例のOS中央値は、FOLFOX4群の19.2ヵ月に対し、Pmab + FOLFOX4群では15.5ヵ月と有意差はないものの、劣っている傾向がみられた (HR=1.16, p=0.162) (図2)

図1

図2

 KRAS exon2野生型の656例中535例、変異型の440例中388例にOSのイベントが発生し、定量的交互作用検定では試験治療によりKRAS exon2野生型と変異型のOSに有意差が認められた(p=0.013)。

 さらに、forest plot解析でKRAS exon2野生型、変異型の別に、様々な背景因子のHRを比較検討したところ、KRAS exon2野生型では大部分の因子でPmab + FOLFOX4のほうが良好な結果であり、逆にKRAS exon2変異型では大部分の因子でFOLFOX4のほうが良好な結果であった。

 試験治療以降の治療についてもデータが更新されたが、これまでの報告と同様にKRAS exon2野生型、変異型の症例ともに、抗EGFR抗体薬、化学療法 (CPT-11、L-OHP、5-FU) の使用頻度はPmab + FOLFOX4群のほうが低かった。重篤な有害事象の頻度についても、新たな追加情報はなかった。

結論

 今回の探索的な解析は、PRIME試験において最もOSのイベントが確定されたデータとなったが、KRAS exon2野生型症例では、Pmab + FOLFOX4群がFOLFOX4群と比較してOS中央値で4.4ヵ月の上乗せ効果を認めた (HR=0.83, 95% CI: 0.70-0.98, p=0.027)。これまでの解析と同様、KRAS exon2変異型症例では、FOLFOX群に比べ、Pmab + FOLFOX4群の成績が下回る傾向がみられた (HR=1.16, 95% CI: 0.94-1.41, p=0.162)。

 KRAS 遺伝子検査は、Pmab + FOLFOX4の治療対象を選択する上で欠かせない検査だといえる。

コメント

 これまで、本サイトでも何度か報告しているPRIME試験のOS解析の報告である。2011年米国臨床腫瘍学会で報告されたデータ2) と比較すると、大きな差は無いものの、KRAS 野生型症例におけるHRは0.88から0.83に、p値は0.17から0.027と、より明確な効果が示されている。もちろん、イベント数が445から535に増加したことが検出力の増した大きな理由であるが、生存曲線を比較してみると、より後半部分での開きが大きくなっているようにも見える。これが前回報告されていたようにconversion therapyの症例数の増加によるものかどうかは不明であるが、2nd-line、3rd-lineの影響を大きく受けていることは間違いがない。昨日のFIRE-3試験の結果にも見られるように、1st-lineにおける抗EGFR抗体の優越性を示唆したものと考えられる。

(レポート:坂東 英明 監修・コメント:寺島 雅典)

Reference
  1. 1) Douillard JY, et al.: J Clin Oncol. 28(31): 4697-4705, 2010 [PubMed]
  2. 2) Douillard JY, et al.: 2011 Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology®: abst #3510

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