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Abstract #4010
転移性膵癌に対する1st-lineとしてのFOLFIRINOX vs gemcitabineの無作為化比較第III相試験:PRODIGE 4/ACCORD 11試験 (pIII)
Randomized phase III trial comparing FOLFIRINOX (F:5FU/leucovorin [LV], irinotecan [I], and oxaliplatin [O]) versus gemcitabine (G) as 1st-line treatment for metastatic pancreatic adenocarcinoma (MPA) :PRODIGE 4/ACCORD 11 trial.

Thierry Conroy, et al.

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背景

 転移性膵癌に対するgemcitabine単剤療法のmedian survival time (MST) は6-7ヵ月であり、gemcitabineベースの併用化学療法がさらにoverall survival (OS) を延長したとする報告はほとんどない。
 これまでに、良好なPSの膵癌症例を対象としたFOLFIRINOXの第II相試験では、MST9.5ヵ月と延長を確認した。gemcitabine単剤 vs FOLFIRINOXの無作為化比較第II相試験では、奏効率でFOLFIRINOX (31.8%) がgemcitabine単剤 (11.4%) より良好であることが報告されている1)

1) Ychou M, et al. 2007 Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology® #4516

対象と方法

 転移性膵癌患者を、FOLFIRINOX [F群] (oxaliplatin 85 mg/m2 day1, irinotecan 180 mg/m2 day1, LV 400 mg/m2 day1 followed by 5-FU 400 mg/m2 bolus day1 and 2,400 mg/m2 46h continuous infusion biweekly) またはgemcitabine単剤投与[Gem群] (1,000 mg/m2 IV weekly×7, 1 week rest, then weekly×3q4w) に無作為に割り付けた。

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 主な適格基準は、組織および細胞診にて膵癌と診断、測定可能病変を有する、化学療法歴および放射線照射歴がない、臓器機能が保たれているなどである。

・一次エンドポイント:overall survival (OS)
・二次エンドポイント:objective response rate (ORR)、忍容性、progression-free survival (PFS)、QOL

結果

 342症例 (F群/Gem群:171/171) が登録された。膵頭部癌がそれぞれ36.3%、35.1%、PS 0-1が99.4%、100%であった。
 Grade 3/4の有害事象は、好中球減少 (F群/Gem群:45.7%/18.7%)、発熱性好中球減少症 (5.4%/0.6%)、下痢 (12.7%/1.2%)、嘔吐 (14.5%/4.7%)、疲労 (23.2%/14.2%) などであった。
 ORRはF群31%、Gem群9.4% (p=0.0001)、PFS中央値は、それぞれ6.4ヵ月、3.3ヵ月 (HR=0.47、95%CI:0.37-0.59、p<0.0001)、OS中央値は11.1ヵ月、6.8ヵ月 (HR=0.57、95%CI:0.45-0.73、p<0.0001) で有意にF群での延長が認められた。

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結論

 FOLFIRINOXは、gemcitabine単剤療法よりgrade 3/4の有害事象の発現が高く、QOLの回復期間も長かったものの、マネジメントが可能な範囲内であった。FOLFIRINOXは良好なPSの転移性膵癌症例に対して、ORR、PFS、OSのいずれにおいてもgemcitabine単剤療法より優れており、新たな標準治療となる可能性を認めた。

コメント

 膵癌における一次治療として、gemcitabineを含まないレジメンの優越性が証明されたことが画期的である。ただし、本邦で標準治療としてすぐ認知されるかどうかについては疑問が残る。本療法は大腸癌領域においてはFOLFOXIRI2)として紹介されているが、本邦の一般臨床には広まっていない。進行膵癌症例は全身状態が不安定なことが多いのに対し、本試験はPS 1以下の症例に対象を限定しており、全身状態が良好な症例のみの適応である。進行膵癌症例では閉塞性黄疸症例も多く、肝代謝であるirinotecanの高用量使用には十分な配慮が必要となる。本邦では、すでに一般臨床で頻用されているレジメンを評価するGEST試験が進行しているといった背景が、実臨床での使用に影響すると思われる。Irinotecan、oxaliplatinがストラテジーに加わることによる、今後の膵癌化学療法の大きな転換を期待したい。

2) Falcone A, et al., J Clin Oncol. 2007; 25 (13):1670-1676

(レポート:松阪 諭 監修・コメント:佐藤 温)

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