霧島市立医師会医療センターは、鹿児島県の中央部・霧島市に位置する250床の市中病院で、地域医療支援病院、へき地医療拠点病院に指定されている(図1)。1年間の救急車受け入れ件数は1,500件とかなり多く、常勤の医師は19名。慢性的なマンパワー不足に悩まされている。鹿児島空港や高速道路が近いため、県内各地との交通アクセスがよく離島への代診派遣など、へき地医療機関への医療支援も行っている。
こうした環境にありながら、同病院では、以前からがん診療に対する積極的な取り組みを行ってきた(表1)。2003年には、看護部長が中心となって『緩和ケアチーム』が編成された。その動きに追随するように、2006年2月に『外来化学療法室』、同年3月に専門相談員を配置した『地域がん支援相談室』の開設などが進められた。癌研有明病院でのがん化学療法短期研修に参加する前に、すでに外来化学療法が始められていたのである。
また、がん化学療法短期研修が行われる前に、同病院からは内科の三阪高春先生が個人で癌研有明病院での9ヵ月間にわたる化学療法の研修を受けている。
「FOLFOXが登場してきたところで、化学療法をきちんと習得しておく必要性を感じました。それで、同じ自治医科大学の先輩である癌研の畠清彦先生に相談し、癌研有明病院で臨床研修をさせていただくことになったのです。その間、100例以上の症例を担当し、最新の化学療法を経験することができました」(三阪先生)
ちょうどこのころ、癌研有明病院では、「がん化学療法短期研修プログラム」を始めることになった。地元・福井県内の複数の病院・診療所で働いた経験をもつ畠先生は、日本における施設間・医師間格差の解消による化学療法の均てん化の必要性を強く感じていたという。地域がん診療連携拠点病院ではなく、地域の第一線病院を対象としたのもそのためだ。
三阪先生が個人で研修を受けていた期間中ということもあり、その第1回の短期研修を霧島市立医師会医療センターが受けることになった。この短期研修は、医師、薬剤師、看護師がチームとして参加することになっている。同病院からは三阪先生のほか、外科の二渡久智先生、砂田和幸薬剤師、松枝文子看護師、新村弥生看護師が参加した。
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講義を受ける霧島市立医師会医療センターの参加メンバーと癌研有明病院の畠先生 |
短期研修は2006年の11月27日〜12月1日にかけて行われた。参加した方々に受講して感じたことについてうかがってみた。
「個人で受けた研修(2006年4〜12月)では、多くの症例を経験でき、特に有害事象をたくさん見ることができたことが貴重な経験でした。一方、チームで受けた短期研修では、改めて病院の組織やシステムづくりの必要性を感じました」(三阪先生)
「自分たちの病院のドクターや薬剤師が、患者さんにどんな説明をしているのかを初めて知りました。それまでは、それぞれの職種がばらばらに活動していましたからね。短期研修に参加することで、初めてチームとしての共通理解を持ったような気がします」(松枝看護師)
「それぞれの職種が何をするのかが明らかになり、薬剤師として自分が何をすべきかを考えるきっかけになりました」(砂田薬剤師)
5日間の短期ではあったが、それぞれが得たものは想像以上に大きかったようだ。
図1 霧島市立医師会医療センターの所在地
