短期研修後、新たに始まった治療として、FOLFOXの外来治療がある。短期研修で学んだバクスター社のインフューザーポンプを導入し、外来での治療が始まった。当初はFOLFOX4を導入し、その後mFOLFOX6に移行した。入院で受けるか外来で受けるかは、患者さんと家族に任せているが、入院から外来治療に移るケースもあったという。
  抗がん剤のミキシングに関しては、従来は外来治療分を薬剤師が担当し、入院治療分は看護師が病棟で行っていた。2007年3月からはすべてが薬剤師の担当となり、交替制でミキシングを担当している(図4)。外来化学療法室の隣に設置された安全キャビネットを使用し、必ずダブルチェックをするようにしている。
  先述のデータベースには、ミキシングに関するメニューもある。データベース上の「無菌調製メニュー」ボタンを押すと、調製方法が詳細に決められており、誰が担当になっても、まったく同じ方法で、同じ調製が行えるようになっているのだ。
  また、「有害事象管理メニュー」も設けられ、CTCAEに基づいて有害事象を管理できるようになっている(図5)。外来化学療法を受ける患者さんには、毎回CTCAEに基づいた問診表に記入してもらい、データベースに記録する。これも短期研修後に始めたことの1つだ。担当の看護師たちは皆、CTCAEの有害事象評価法を一から勉強し、それが実際の臨床の現場でも活用されているという。外来化学療法室の壁には手作りの一覧表が貼られ、多くの看護師はポケットサイズの一覧表を携帯し、有害事象の管理に利用している。
  外来化学療法室のワゴンに備えつけられた「レスキューセット」には、アナフィラキシーショックなどに対応するための医薬品や注射器などがコンパクトにまとめられ、マニュアルが添付されている。医師が到着するまでの状況下でも、患者さんの急変に対応できるように考案されたものだ。これまでに3回使われたことがあるという。
 患者に対する説明資材は、癌研での短期研修時に作成したものも使われている。ただ、同病院の外来化学療法では、患者さんの30%が75歳以上の高齢者で、本人・家族ともにがんについての知識が少ないことも多いため、チャートや図を増やし、よりわかりやすさを重視した資材に工夫されていた。

外来化学療法室のワゴンに常備されているレスキューセット。
誰でも正しく迅速に対応できるよう、蓋の裏側にマニュアルが
セットされている。

現在、霧島市立医師会医療センターで使われている患者向け説明資材の一部。短期研修中につくられたものもあれば、写真右下の治療選択チャートのように、オリジナルのものもある。

図4 2007年の薬剤師の無菌調製件数(2007.1月〜12月)

2007年の薬剤師の無菌調製件数(2007.1月〜12月)
院内の抗癌剤のミキシングをすべて薬剤師が担当するようになった2007年のデータ。 癌種では大腸癌が最も多く、入院から外来への移行が目立っている。
また、内科医が化学療法を行う割合も増加した。

図5 化学療法管理データベースの有害事象管理メニュー

上は、個々の患者の投与指示画面から直接見ることができる有害事象一覧の画面。
右のCTCAEに従った有害事象の問診表を化学療法終了後に患者さんに渡し、次回投与日に持参してもらい、その内容をデータベースに記入する。
各コースごとにCTCAEに従った有害事象の有無、グレードを一度に確認できるようになっている。