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CASE 14 直腸癌 2006年7月開催

CASE14 写真

ディスカッション 3

毒性の強い症例では抗腫瘍効果も強い

佐藤:8日目にG-CSF投与が開始されますが、翌9日目には消化器症状、血液データともに悪化し、体温も37.6℃に上昇しています。10日目にはPSが4になり、11日目には好中球数が100/μL以下、血小板が3万となりましたので、G-CSF、抗生物質、γ-グロブリン製剤の投与と、血小板輸血が行われています。12日目の状態はプロファイルのとおりですが、この段階での対処はいかがでしょうか。

瀧内:できるだけこのような状況に至らないようにしたいものですが、このような臨床経過を辿ってしまった場合には、家族への説明が大切になります。毎日でも詳しく説明することが最も大切なポイントで、これを怠ってはいけません。できる限りの対策を行っているわけですから、あとは経過を観察するしかありません。ただ、12日目でクレアチニン値が改善されているのは明るい兆候です。

佐藤:この時点で、γ-グロブリン製剤、血小板輸血、新鮮凍結血漿(FFP)、抗真菌薬と、考え得る限りの治療が行われている印象ですが、それぞれの可否はどうでしょうか。

瀧内:私は、すべて行うべきだと思います。

大村:血小板輸血は必要でしょうか。私なら行わないと思いますが。

坂本:確かに、血小板の減少はこのケースではそれほど恐れる必要はないかもしれません。ただし、この症例の場合は、毒性を軽減するためには何でも試みるしかないかと思っています。その可否は、結果でしか判断できません。

佐藤:その後は回復に向かいますが、18日目に嘔吐。先生方は、このような経験はありませんか。

瀧内:判断材料に乏しいですが、抗癌剤治療が終わってからあまりにも時間が経ち過ぎていますから、薬剤起因性とは考えにくいですね。

佐藤:経験的な話なのですが、激しい下痢の後、スイッチが変わるように麻痺性イレウスを発症する症例を何例か経験しています。重篤ではないので、経鼻経管栄養チューブの挿入だけで、数日程度で改善します。このような経過も前もって経験・知識があると慌てないですみます。

瀧内:腹痛があれば、薬剤により小腸粘膜が脱落している可能性は十分にありますから、小腸潰瘍などを疑いますが。

佐藤:腹痛はないという設定でしたが、そのような状態になっていることは考えられます。しかし、薬剤は症状が安定したら次々と中止していますので、薬剤のせいだけではないと考えています。
 ここまでの副作用対策の結果、約1ヵ月後に回復しました。副作用の強い症例では抗腫瘍効果も強いことが多く、この症例でも、38日目に明らかな肝転移縮小が認められました。副作用からの回復後はPSも良好ですが、これ以後の治療方針についてはどのように考えますか。

大村:CPT-11を含むレジメは除外します。どこまで減量したら安全なのかがわかりませんから、この症例ではCPT-11は使わず、FOLFOXを選択します。

坂本:この症例は、恐らくUGT1A1遺伝子多型が関与しているものと思われます。また、これだけの奏効がみられたですから、薬物動態学的に代謝産物SN-38の濃度を測定しながら、それに応じたストラテジーを立て、CPT-11による治療を継続することもぜひ考慮したいと思います。とはいえ、言うのは簡単ですが、実際、もう1回CPT-11による再治療を行うことは、なかなか難しいこともわかっています。

瀧内:私も一度、同様の臨床経過を辿った症例で苦労したことがありますが、やはり奏効し、1サイクルでCRになりましたから、こうした症例には抗腫瘍効果が高いのだと思います。その時は、正直なところCPT-11を使うのは怖かったので、LV/5-FUで治療しましたが、3年ほどCRが持続しました。

大村:確かにFOLFIRIに限らず、毒性が問題にならない症例より毒性が強く現れる症例で、抗腫瘍効果が高い印象があります。副作用が強く現れている患者さんには、「今、腫瘍細胞も苦しんでいるのですよ」と声をかけています。腫瘍細胞と正常細胞は相同性が高いのですから、これは自明のことといえるかもしれません。

久保田:総ビリルビン値が上昇していませんから、グルクロン酸抱合障害ではなく、UGT1A1の遺伝子多型例と考えられます。CRになったという話を聞くとCPT-11減量投与を試みたくもなりますが、どこまで減量すれば安全であるかはわかりませんから、臨床ではCPT-11は使わないと思います。LV/5-FUかFOLFOXを行うでしょう。

佐藤:そうですか……。私は、まずLV/5-FUを投与して観察した後、問題なければCPT-11の減量投与も考えられるかと思いました。

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