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CASE 14 直腸癌 2006年7月開催

CASE14 写真

ディスカッション 2

頻回の血液検査でG-CSF投与のタイミングを逃さない

佐藤:その後、ロペラミドやポリカルボフィルカルシウムなどの止痢剤と輸液で泥状便の改善を図りますが、なかなか下痢は治まらず、肛門周囲痛も悪化しています。

瀧内:こういう状態になると、どのような対策でも下痢は止まらず、まさしく祈るしかないという感じです。輸液と感染予防しか対策はありません。感染を合併すると、多臓器不全(MOF)に陥り、生命に危険が及びますので、注意が必要です。

佐藤:肛門周囲のびらんなどを毎日何回も清拭して感染防御に努める必要がありますね。

瀧内:8日目に食事不可とありますが、4日目の時点で絶食にしなかったのは大きな問題だと思います。4日目の時点ですでに絶食は必須です。

佐藤:8日目の時点ではどのように対処しますか。

瀧内:G-CSFを投与します。4日目から8日目にかけての血液データが極めて重要ですので、頻回に採血してチェックを欠かさず、もっと早くに対応すべきでした。この状態ではおそらくアルブミンも低値になっており、生命が危険な状態です。

大村:この間も血液検査は行っていたのですね。

佐藤:いいえ、入院患者では血液検査は週2回がスタンダードですので、それに合わせて行っていません。つまり、4日目に危険性は感じていますが、血液データから、まだ4日程度でそんなに急には悪化しないだろうと判断しているということです。実臨床で十分に起こりうる事態です。

大村:患者さんの全身状態がよければ、ありうることですね。

坂本:しかし、この症例はかなりレアなケースと考えてよいのではありませんか。

瀧内:レアケースですが、年に1例程度は経験しますし、患者さんの生命に関わりますから注意が必要です。

佐藤:この症例では、8日目に悪化を認めた時点でG-CSFを投与するということですね。

瀧内:できることならば、4日目の時点でG-CSF投与を開始したいくらいです。

佐藤:そのポイントはどこにありますか。

瀧内:FOLFIRIの場合、ひどい下痢がきてから急激な骨髄抑制が表れるのが典型的なパターンですから、こうした重度の下痢がある場合は早めに投与しておいて後悔することはないと思います。

大村: BUN、クレアチニン値の上昇が続いており、循環不全からMOFに陥ることも考えられます。この間の輸液量はどの程度でしょうか。排便量にもよりますが、絶飲食として腸管の安静を図った場合には、ベースの輸液量がおおむね2,000mLとして、それに喪失した水分量を追加する必要があります。泥状便が13回であれば、少なくとも1,500mL程度の追加は必要でしょう。さらに、腸管の浮腫など他の要因で失われる分も考慮すると、4,000mL以上の輸液が必要だと思います。尿量や尿比重をみて適正な輸液の施行に努めたいところです。

佐藤:輸液は十分に行っているつもりでも、不足している可能性がありますね。

大村:はい。細胞外液補充液には1L中に7〜8gの塩化ナトリウムが含まれていますが、維持液は3分の1の2g程度しか含んでいません。したがって、維持液では塩化ナトリウムが不足してしまいます。スポーツ飲料などではさらに少なくなりますので、経口で水分を補給する場合には、別に塩分を摂るよう注意しなくてはなりません。

久保田:いずれにしても、中心静脈ルートを確保し、血液検査・尿量を見比べながら過不足のない輸液療法が要求されますね。

佐藤:本症例の場合、重度の粘膜炎の次に起こる急激な骨髄機能抑制に備えて頻回チェック、早期の治療開始準備と万全の体制をとるべきということですね。抗癌剤治療では、あらかじめ次に何が起こるかを知っていることが大切ということでしょうね。

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