瀧内(大阪医大)
イントロダクションでご説明いただいたように、ベッドの稼働状況は施設によって異なりますね。特に愛知県がんセンターは混雑しているとのことですが、待ち時間を短縮する工夫はされていますか。
室(愛知がん) 連休明けなどは特に混むので、採血の開始を30分繰り上げて8時からとし、外来の開始時間も早めるよう徹底させています。最も混雑する午前10時〜午後1時の時間帯を避けて来院するよう促したり、なるべく患者数の少ない月曜日に来ていただくなどの工夫はしています。また、輸血は通常、外来化学療法センターで行っていますが、混雑時は病棟での輸血をお願いするなどの細々とした工夫をしています。
瀧内 ほかの施設では、待ち時間はそれほど長くないということでしたね。
金井(聖路加・看) 乳腺外科の患者さんは、直接オンコロジーセンターで採血およびルート確保をしてから診察を受けるので、ほとんど待ち時間はありませんが、その他の患者さんは中央採血室で採血をして、結果が出たら各科で診察を受けてオンコロジーセンターを訪室するため、点滴開始までには1時間以上かかります。
野村(杏林大・薬) ベッドがすべて予約制なので、診察が終わって主治医から指示が来るとすぐに始められる状況になっています。ただし、診察時間が延びたり、検査結果が出るのが遅れると、時間がずれて次の患者さんが入れなくなるので、外来化学療法室から「早く入れてください」と各科に電話で催促します。予約の電話がかかってきても、「この日は一杯です」「この時間帯なら空いています」といってずらしてもらうこともあります。
佐藤(昭和大) そのシステムは、当日患者さんを入れたいと思ってもなかなか融通が利かないので、医師のほうが大変でしょうね。ほかの施設も予約制ですか。
篠崎(県立広島) 最初は予約制にしようと考えていたのですが、時間がずれてくるとベッドの振り分けが難しくなるので、用意ができた方から入っていただきます。
金井 当院もベッド予約ではなく、「30分に10人を超えないように」といった時間予約にしています。
室 患者数が多いと、ベッド予約制は難しいですね。いらした患者さんから順に入っていただかないと、二進も三進もいかなくなってしまいます。
野村 現在は、手書きの紙ベースでのベッド予約にしていますが、今後はパソコンのシステムにするよう申請中です。
佐藤 システムを導入すると便利ですが、看護師が大変になりませんか。当院もパソコンで入力するのですが、満床になるとオーダーを入れられないので困っているのです。看護師に無理を言って頼むこともあります。また、レジメンによって投与時間に差がありますが、どのように割り振っていますか。
瀧内 ベッドごとに現場の看護師がきちんと割り振りをします。例えば、TJは非常に時間がかかりますが、比較的短時間で終わるレジメンもありますからね。
待ち時間短縮の工夫として、前日に採血するという考えもあると思いますが、2回も来院していただくのは難しいですか。
佐藤 患者さんのご希望によりますね。近くにお住まいの方では、前日に採血をして、朝一番に化学療法を始める場合もあります。
瀧内 ほかの施設では当日の採血が多いようですが、どの施設もやはり1〜1.5時間ほどかかりますか。
室 末梢血検査で判断することが多く、検査結果は30分以内に出ますが、生化学検査まですると1時間ほどかかります。また、trastuzumab単独やweekly paclitaxelなど、レジメンによっては、必ずしも毎回採血を行うわけではありません。
篠崎 大腸癌はポンプへの薬液注入に50分程度かかるため、待ち時間延長の一因となっていました。現在は、ポンプを使用するレジメンが同じ日に集中しないように調整していますが、どうしても集中してしまうときには、早めに薬剤師が5-FUを詰めています。
野村 ポンプへの注入時間は短縮できます。例えばFOLFOXでは、先にL-OHPの点滴を始め、最後にポンプを渡すようにしているので、待ち時間のストレスは少ないと思います。また、薬剤師が前日に計数調剤を行い、中央薬剤部では薬歴とプロトコールを確実にチェックし、ミキシング担当の薬剤師も再度確認をします。さらに、外来化学療法室の担当薬剤師が支持療法薬なども含め、細かいチェックをしています。
瀧内 そのほかに、前もって行うべきことはありますか。
室 看護師は、医師が記載した投与計画書を前日までにチェックします。当院では薬剤師が少ないため、投与量なども看護師がチェックし、疑義があったら当日までに主治医に伝わるようなシステムにしています。
瀧内 当院も紙ベースの投与計画書を使用していますが、薬剤師が全部チェックしてくれます。
篠崎 我々は電子カルテとオーダーリングシステムを導入しているので、標準量設定以外は入力できません。それを前日に薬剤師がチェックしています。
図1 聖路加国際病院における外来化学療法の業務フロー
図2 杏林大学医学部付属病院における外来化学療法の業務フロー