
瀧内(大阪医大) 各施設とも限られた人員で外来化学療法室を運営されていますが、本来は各職種が専門性を生かし、役割分担すべきだと思います。先ほど、看護師が抗癌剤のミキシングをしているというお話がありましたが、詳しくおうかがいできますか。
室(愛知がん) 当院では、抗癌剤は基本的に、薬剤師が地下1階にある安全キャビネットでミキシングします。ただ、外来化療センターが2階にあるため、持って上がる時間と作業が生じます。そのため、主に看護助手が運搬役となり、人海戦術で対応せざるを得ない状況です。ミキシングが律速段階になってしまう混雑時では、看護師がミキシングを手伝うケースもあります。
野村(杏林大・薬) 半年前までは外来化学療法室の中にミキシングをするブースがあり、すぐ手渡しできたのですが、少ない薬剤師を効率的に使うために中央化し、薬剤部で入院用と一緒にミキシングすることにしたのです。したがって現在は、地下1階の薬剤部と3階の外来化学療法室とに分かれているため、メッセンジャーを使って搬送しています。
金井(聖路加・看) 当院はその逆で、抗癌剤はオンコロジーセンター内でミキシングしたほうがよいということで、入院患者のミキシングも行い、スタッフが病棟に運んでいます。
瀧内 外来化学療法室内でミキシングするのがよいと思いますが、入院患者の抗癌剤点滴が多くなってくると難しい面もあるかもしれませんね。
篠崎(県立広島) 当院も聖路加と同じで、入院患者のミキシングもすべて化学療法センターの調剤室で行うことにして、安全キャビネットを増設しました。病棟看護師には、「そのほうが自分の安全にもなる」と話して、取りに来てもらっています。
野村 ただ、中央化によるメリットもあるのです。外来化学療法室専属薬剤師2名のうち1名は、調剤をしなくてよいので、患者さんの指導やモニタリングに専念でき、薬剤の追加時や問題発生時などにも介入できます。しかし一番の問題は、薬剤師が病棟で指導をすれば350点が加算になるのに、外来でいくら指導をしても現時点では加算にならないことです。
瀧内 大きな問題ですね。しかし、薬剤師の外来指導の重要性を理解してもらわないと、よいチーム医療はできないと思います。少しでも点数がつけばよいのですが。
篠崎 外来化学療法加算では専属の薬剤師がいることが必須条件ですが、そこに薬剤師による指導が含まれるという考え方もあるかもしれませんね。
野村 例えば、外来での薬剤師による指導がない場合は450点、指導をしたら500点というように、目に見える加算になるとよいと思います。また、外来化学療法室の薬剤師の役割として、気づいたことはできるだけカルテやインシデントレポートに記載するようにしています。
瀧内 専従の薬剤師がいる施設は、点数を上げるべきだと思います。野村先生は大変でしょうが、その努力を続けていかれたら、きっと認められると思います。

瀧内 多職種が集まるチーム医療では、情報共有が極めて重要ですが、各施設ではどのように工夫されていますか。
篠崎 当院では週に1回、外来化学療法室で患者さんのチームカンファレンスを行っています。
金井 消化器癌では月1回、医師、薬剤師、看護師、病棟看護師が集まってミーティングを行っています。問題症例だけでなく、治療中の患者さんすべてが対象です。乳腺の外来では、乳腺腫瘍医と看護師で再発例のカンファレンスを行っていますが、問題症例だけで、薬剤師も参加していません。
野村 当院では、初めて外来化学療法室を利用する患者さん全例を対象とした、治療前カンファレンスを前日までに必ず行います。看護師は、ご家族などのキーパーソンや生活環境、同意書、告知内容などを確認し、薬剤師はプロトコールの内容や投与量・投与スケジュールなどを確認します
(表1)。また、毎朝、腫瘍内科の医師も参加するスタッフ・カンファンレンスを行い、その日治療する患者さん全員の見直しをしています。
室 当院には、外来化学療法に特化した部署がありません。そのため、薬物療法部長である私が深く関与してはいますが、私が中心になってカンファレンスを行うようなシステムにはなっていません。ただ、看護師の毎朝のミーティング時などに顔を出すようにしています。また、月に1回はCRCや事務なども含めた、外来化学療法のスタッフ全員が集まるミーティングを行っています。
佐藤(昭和大) 私の立場も室先生と同じで、腫瘍センターには所属していないのですが、実働部隊として関わっている状況です。看護部が毎朝、その日に治療する全症例に関するスタッフ・ミーティングを行っているので、できるだけ参加するようにしています。外来化学療法に関わる診療科は幅広いため、それをどうやって結びつけようかと悩んでいるところです。
表1 治療前カンファレンスの意義(杏林大学医学部付属病院)