チーム医療の巻 外来化学療法編 第1回 チーム医療の巻
3. 看護師の視点、薬剤師の視点

チームメンバーの声に耳を傾ける

篠崎先生 篠崎(県立広島) 患者さんが医師、看護師、薬剤師に話す内容や見せる表情は、それぞれ違います。医師の前では治療継続の意欲を見せても、本当は治療を中断したいと考えている患者さんもいます。コメディカルはそういう気持ちを聞き出して医師に伝え、必要なら治療を中止することも重要だと思います。
医師が患者さんをみるのは診察室内だけですが、看護師は点滴中や通院されてくる姿、歩行の様子などを見ているので、PSが悪くなったというような情報を察知して、医師にフィードバックしてくれると助かります。看護師から「化学療法を中止して、緩和ケアを主体としたアプローチをしてはどうか」と提案されることもあります。

佐藤(昭和大) 当日の化学療法の施行については、医師が診察して決定するわけですが、外来化学療法室では、看護師、薬剤師など、全スタッフがみることが大事です。別のスタッフがちょっとしたことに気づいて、投与中止となることもありますから。

金井(聖路加・看) 確かに、各診療科からオンコロジーセンターに移動された後に、いろいろな要因で「これは本日投与できない」というケースがありますね。

瀧内(大阪医大) その判断は難しいですね。状況によってはPS3でも施行する場合があります。そのことを医師が看護師、薬剤師に事前に説明して、全スタッフが認識していればいいのです。

野村(杏林大・薬) たとえ小さな間違いでも、自分が疑問だと思えば、薬剤師も全て疑義照会するべきだと思います。医師が「わかった上でしている」と言えばそれでよいですし、そのことをカルテに記載にしておけばよいと思うのです。

野村先生 金井 患者さんの病状はカルテの記載を中心に把握していますので、医師と直接コンタクトをとることは大事ですね。当院では看護師が採血結果を確認し、気になる状況があれば同時に医師に申し送り指示を仰ぎます。

瀧内 それはよいですね。チーム医療の最先端ですね。

室(愛知がん) 投与量なども、「前回と違うけれど」と薬剤師から言われることがあります。毒性が強くて減らしている場合もありますが、間違いの場合もあるので、言っていただくほうがありがたいです。

瀧内 医師1人の判断にはバイアスが入ってくるので、異なる職種の目も必要だと思います。ぜひ遠慮せずに、薬剤師、看護師からも意見を言っていただきたいですね。

“点”ではなく、“線”でみられる体制を

 私個人の考えですが、外来化学療法室は、看護師が中心になって動くべきだと思っています。専門看護師(CNS)や認定看護師が中心になり、全領域を見渡すスタッフがいて、稼働するシステムを確立していかなければいけないと思っています。

瀧内 金井先生は、看護師のお立場からいかがですか。

金井 外来化学療法を始めたころは、各科の先生からの指示が違う、前投薬が違うといった苦労がありました。現場にいる看護師が各先生にフィードバックして、安全に治療を行うために、さまざまなことを院内で統一していただくように働きかけました。

野村 ここ最近、看護師の病棟と外来一元化の動きがあり、当院でも、看護師が化学療法の病棟と外来化学療法室をローテーションしているのですが、病棟看護師は外来化学療法室に来てもその日だけピンポイントでみることになってしまいます。外来化学療法は長く続ける治療ですから、「PSが悪い」「最近、顔色が悪い」「痩せた」など、患者さんのちょっとした変化を“点”ではなく、“線”でみられる看護師が必要だと感じます。

瀧内先生瀧内 それは大事なポイントだと思います。私も病院長に働きかけて、やっと専従の看護師を6名確保できました。近い将来、入院と外来化学療法センターを一体化させることを目指しています。“点”でしかみられないというのは、本当によくないと思います。

野村 施設によっては外来化学療法室を1つの病棟としてみて、そこに師長とスタッフがいるという組織になっていますが、外来化学療法室は外来や病棟の付属で、“点”でしかみられていない施設もまだまだ多いのが現状ではないでしょうか。

篠崎 私も同感です。また、病棟単位で、化学療法の投与方法や点滴の管理、ルートの穿刺なども異なるという問題があります。7対1看護基準があるため、病棟から外来へ応援に来てもらうことは難しいのですが、今後は、病棟で化学療法にかかわる看護師をトレーニングする名目で臨床腫瘍科に応援に来てもらう体制をつくり、病棟と外来を結び付けたいと考えています。

瀧内 なかなか難しいですね。責任ある立場の人間が病院長に働きかけて、経済的な収益の裏付けで納得してもらうしかないと思います。
 
   
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