チーム医療の巻 外来化学療法編 イントロダクション
各施設における外来化学療法の体制と稼動状況
瀧内先生 瀧内(大阪医大) 今回は「外来化学療法編」と題し、進めていきたいと思います。本日ご出席の先生方のご施設でも、さまざまな課題を抱えておられるでしょうが、そうした課題も他施設の先生方にとって何らかのヒントになると思いますので、いろいろお聞かせください。また、本日は薬剤師、看護師の先生にもお越しいただいたので、医師とは違う立場からご意見をおうかがいしていきたいと思います。
 それでは、まずディスカッションの前に、各施設における外来化学療法の施行体制と稼働状況をご紹介いただけますか。

室(愛知がん) 愛知県がんセンター中央病院の外来化学療法センターは、現在30床です。午前・午後で当番医師が1名ずつ就きます。看護師は8名で、ほとんどが専従です。治療件数は約1,500件/月です。ベッドを1日に2〜3回転させ、計70〜80名を治療していますが、非常に混み合っており、待ち時間が常時1時間、混雑時は3時間になることもあるのが今の大きな問題です。

野村(杏林大・薬) 杏林大学病院がんセンターの外来化学療法室は14床です。抗癌剤のミキシングを中央化したため、外来化学療法室常駐の薬剤師は1名、看護師は3〜6名です。また、外来化学療法室内に腫瘍内科の診察室が設置されたので、医師は常に近くにおります。
 ルート確保は各科の診察室で行うため、患者さんの外来化学療法室入室後、すぐに化学療法を開始することでき、待ち時間はほとんどありません。治療件数は450件/月で、1日当たり20名前後ですので、ベッドの稼働は1.5回転程度です。

金井(聖路加・看) 聖路加国際病院では、当初「外来点滴センター」という形で輸液や輸血なども行っていましたが、2009年4月に「オンコロジーセンター」に移り、化学療法だけを行うブースになりました。現在は「PSの悪い方は外来での化学療法は受けられない」との考えから、リクライニングチェア39台を使用しております。スタッフは、センター長1名、兼務医師4名、薬剤師4名、看護師17名(ローテーション看護師含む)、受付2名、ボランティア各曜日1名です。
 乳腺外科の患者さんが7割以上を占め、消化器癌は12%程度です。患者数は化学療法が1日平均45名、リュープロレリンや化学療法以外の点滴、輸血などを含めても70名程度で、2回転はしていません。
 部屋を3エリアに分け、真ん中に全体をみるインチャージナース、エリアごとにリーダーナースを配置し、スタッフナースと一緒に働くという形にしています(図1)。リクライニングチェアをカーテンで仕切ったエリアと、患者さん同士が情報交換できるように仕切らないエリアをつくっています。センター内の薬剤室には3台の安全キャビネットがあり、入院用のミキシングもここで行っています。

金井先生 篠崎(県立広島) 県立広島病院は、760床を有する広島県の地域がん診療連携拠点病院で、2006年7月に臨床腫瘍科を開設しました。外来化学療法に関しては、開設当初より患者紹介という形をとり、化学療法の管理・運用のみならず、在宅ケア支援を臨床腫瘍科が行っています。スタッフは常勤医師3名、看護師4名、専任薬剤師2名で、薬剤師は一般業務にも携わっています。
 臨床腫瘍科は、診察室、採血室、化学療法室、相談室などがすべて1フロアに集まっており、ここで会計までできるので、患者さんはあちこち移動する必要がありません。また、フロア内に無菌調剤室を設け、3台の安全キャビネットで、入院患者も含めた抗癌剤のミキシングを行っています(図2)
 化学療法室は18床あり、腹水・胸水の穿刺や症状緩和のための点滴・輸血なども行っています。治療件数は350件/月前後、10〜26名/日で、大腸癌が最も多くなっています。患者さんの集中する9〜11時の間は、診察待ちが最長で1時間程度発生しますが、血液検査の結果が出るまでに45分程度かかるため、実際の待ち時間は血液検査と調剤時間だけです。

佐藤(昭和大) 昭和大学病院における外来化学療法は2007年に開始し、現在15床を備えています。スタッフは、看護師5名、ヘルパー1名で、さらに研修生が1〜2名加わります。薬剤師はローテーションで1名、医師も当番制で午前・午後に1名ずつ入ります。腫瘍内科が隣で診療しているため、必要なときにはヘルプに来てもらえます。治療件数は250〜300件/月程度で、待ち時間は30分以内におさまっています。

瀧内 大阪医科大学では、外来化学療法センターが2006年4月に10床でスタートし、2008年4月に22床に増床しました。外来化学療法センター内に外来ブースが3つあり、センター専属の医師6名が担当しています。専従の看護師は6名いますが、患者さんの多い日は病棟からヘルプで来てもらいます。また、専従薬剤師2名が服薬指導や抗癌剤の説明などにあたっています。
 センター内には4台の安全キャビネットを備えたミキシング室があり、薬剤部から派遣される3名の薬剤師がミキシングに専念しています。患者数は25名/日前後ですが、曜日によってばらつきがあり、多い日は40名を超すため、ベッドのやりくりが大変です。



表 各施設の外来化学療法の概要
表 各施設の外来化学療法の概要
図1 聖路加国際病院オンコロジーセンターの配置図
図1 聖路加国際病院オンコロジーセンターの配置図
図2 県立広島病院臨床腫瘍科の配置図
図2 県立広島病院臨床腫瘍科の配置図


 
 
編集会議TOPへ

このページのトップへ