加藤 2007年のASCOでは、セツキシマブの効果よりもQOLの改善に関する発表が目立ち、ターミナルに近づいた症例に緩和的に使用してQOLを改善できればと思ったのですが、臨床で使われた実感はいかがですか。
室 治療効果が出ればQOLも改善すると思うのですが、やはり皮疹が問題で、積極的に皮疹の治療を講じる必要があります。現状では、CPT-11不応症例へのCPT-11+セツキシマブという使い方がよいのではないかと思っています。
小松 実際にCPT-11不応症例でも、セツキシマブを併用することで非常によく効く方はいらっしゃいますね。4th-line、5th-lineで使用してもCT上で腫瘍が急速に縮小してくる症例があり、すごい薬が登場したなと思いました。
吉野 個人的には肺癌のゲフィチニブと同じように、限られたポピュレーションに著効するという印象があります。
久保田 ただ、室先生もご指摘のように、皮疹が相当ひどいため、もともと症状のない症例に使った場合、逆にQOLは低下するように思います。それでは、セツキシマブの皮疹に対してはどのような対処をされていますか。
吉野 アトピー性皮膚炎と同じような状態になりますので、風呂上がりなどに保湿剤を全身に塗布し、皮疹のひどい箇所にはステロイド外用剤、ミノマイシンの内服、化膿しそうな箇所には抗生剤含有の外用剤を使うように指導しています。
また、皮疹と治療効果は相関するといわれていますが、投与量と皮疹にも強い相関があることが報告されています。
EVEREST試験7)ではgrade 2の皮疹が現れるまでセツキシマブを増量したところ、常用量群に比べPR率が上昇したと報告されています。とはいえ、皮疹がひどくて中止を余儀なくされそうな患者さんには、やはり減量が望ましいと思います。
佐藤 分子標的治療薬全体にいえることですが、真の至適投与量、投与方法はまだ確定していないように思います。
吉野 何をもって推奨用量とするかが定かではないですね。最大耐用量(MTD)で決めている薬剤もあれば、最小効果が出た投与量を適正用量としている薬剤もあります。
「panitumumabは推奨用量が多すぎるために併用療法がうまくいかないのではないか」という指摘もあります。
久保田 当初、分子標的治療薬は副作用が少ないといわれていましたが、実際にはベバシズマブでは消化管穿孔・高血圧・蛋白尿・出血、セツキシマブでは皮疹など、楽観視できない副作用が現れました。今後は、従来の抗癌剤にはなかったような新たな副作用が重要な問題になってくると思います。
佐藤 分子標的治療薬は導入され始めたばかりでこれからという状況ですから、期待を抱きながらも今後を見守っていく必要がありそうですね。
久保田 本日はお忙しい中にお集まりいただき、どうもありがとうございました。