久保田 セツキシマブも近く承認されるといわれていますが、どのような症例に使ったらよいと思われますか。
※セツキシマブ(アービタックス
®)は2008年7月に承認、9月19日に発売されました。
吉野 原則的には後方的な治療として使われると思います。日本ではCPT-11との併用で承認されると聞いていますので、例えば1st-lineがFOLFOX+ベバシズマブであれば、2nd-line はCPT-11+セツキシマブがよいのではないでしょうか。
室 EPIC 試験4) では、FOLFOX不応症例に対する2nd-lineのCPT-11+セツキシマブ群がCPT-11単独群に比べ、奏効率とPFSにおいて有意な改善を認めましたが、OSでは有意差が出ませんでした。2nd-lineでCPT-11単独群に割り付けられて反応しなかった症例でも、3rd-lineでセツキシマブを加えたところ、OSが2nd-lineでセツキシマブを併用した群と変わらなかったことから、私はCPT-11不応症例に対する3rd-lineでのCPT-11+セツキシマブがよいのではないかと思います。というのも、セツキシマブの皮膚毒性が強いため、できるだけ後に回したほうがよいのではないかと思うのです。
斎藤 私はFOLFOX+ベバシズマブ不応症例に対する 2nd-lineでの使用がよいのではないかと思っているのですが、実際に使ってみないとわからないというのが正直なところです。
小松 今後、panitumumabが日本でどのように承認されるかということも影響してくると思います。症例報告レベルですが、セツキシマブ不応症例にpanitumumabが効く場合
5) もある
ようなので、例えばpanitumumabが3rd-lineで使えるのなら、セツキシマブを先に使ってしまう手もあるかと思います。
吉野 panitumumabの一番の問題は、IFLと併用してgrade 3以上の下痢が50%を超えたことです
6) 。そのために第II相試験が一度中止になっています。一方、セツキシマブは併用療法で比較的良好な実績を残していますから、現時点ではpanitumumabは究極のサルベージ療法といったところではないでしょうか。
ただ、panitumumabの欧州での薬価はセツキシマブの約8割であること、完全ヒト型抗体であるためにinfusion reactionが少ないこと、2週に1度の投与で済むことなど、メリットもあります。したがって、CPT-11が投与できずにセツキシマブ単剤にならざるを得ない症例などには、panitumumabという選択肢が残ると思います。
小松 2007年のセツキシマブの investigators' meetingにKöhne先生がいらして、「肝切除の可能性を考えると、ベバシズマブを併用して縮小してもすぐには手術ができないけれど、セツキシマブの併用なら縮小した時点で切除ができるので、1st-lineとしてのセツキシマブも十分に考えられる」と指摘していました。
久保田 ベバシズマブが先に開発されてエビデンスが確立したので、ベバシズマブ不応症例に対するセツキシマブの利便性が高まり、ベバシズマブが1st-line、セツキシマブは2nd-line以降という順番になったわけですが、肝切除などの手術のことを考えると、セツキシマブを1st-lineで使うことも十分考えられますね。

表1 セツキシマブの主要な臨床試験