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切除不能進行・再発大腸癌におけるPanitumumabの有効性と安全性に関するレトロスペクティブ・コホート試験: HGCSG 1002試験 〜Panitumumabの有害事象に関する解析結果〜
Retrospective Cohort Study on the Safety and Efficacy of Panitumumab for Metastatic Colorectal Cancer Patients: HGCSG 1002 -Analysis of Adverse Events-
Masayoshi Dazai, et al.

日常臨床におけるPanitumumab投与に関して詳細検討の結果報告 -
有害事象としては従来の報告通り、低マグネシウム血症とざ瘡様皮疹に注意が必要
有害事象としては従来の報告通り、低マグネシウム血症とざ瘡様皮疹に注意が必要

Dazaiらは毒性評価が行われた195例を対象に有害事象の解析を報告した。本発表ではgrade 3以上の低マグネシウム血症が11.5%、ざ瘡様皮疹が14.3%と報告されているが、本会で報告された本邦の製造販売後調査 (4.0% / 10.5%) 1)と大差ない結果であった。
低マグネシウム血症は致死的な心電図異常を来す可能性があり、大変重要な有害事象である。今回、一般臨床では約20%の症例で血清マグネシウム濃度測定が行われていないことが報告された。施設間格差もあるかと思うが、治療関連死を導く恐れのある非常に重要な事項であり、この速報が警笛の1つになれば幸いである。
この低マグネシウム血症およびざ瘡様皮疹ともに、3rd-line以降で投与された症例に高頻度に認められる傾向が報告された。後治療のない状況下であり、多少の有害事象には目をつぶって継続せざるを得ない症例が多かったものと解釈できるが、このような対象においては、より積極的な毒性マネジメントの必要性があると解釈できる。
Pmabは、切除不能進行・再発大腸癌のすべての治療ラインにおいて有効性を示しており2-4)、日本では2010年に承認された。また、製造販売後調査により安全性データが報告されている1) 。
HGCSGは、切除不能進行・再発大腸癌患者に対する日本の日常診療におけるPmabの安全性を評価した。
HGCSGは、切除不能進行・再発大腸癌患者に対する日本の日常診療におけるPmabの安全性を評価した。
HGCSG 1002試験では、2010年6月〜2011年10月に20施設で治療された症例のうち、20歳以上で病理学的検査においてKRAS 野生型大腸癌と確認され、Pmabを含む化学療法を実施した200例を対象として解析を行った。
なお、有害事象はCTCAE ver.4.0を用いて評価し、Fisher's exact test、χ2 test、Mann-Whitney's testを用いて統計解析を実施した。
なお、有害事象はCTCAE ver.4.0を用いて評価し、Fisher's exact test、χ2 test、Mann-Whitney's testを用いて統計解析を実施した。
HGCSG 1002試験に登録された200例のうち195例が有害事象について評価可能であった。患者背景は表1の通りであり、3rd-line治療以降が78%であった。

日常診療におけるPmab投与時の有害事象は、従来報告されていたものと同様であったが、grade 3以上の低マグナシウム血症が11.5%、ざ瘡様皮疹が14.3%と高くみられた (表2) 。

治療中止となった191例のうち、有害事象による治療中止は14例であり、その内訳は皮膚障害11例、食欲不振2例、下痢1例であった。
有害事象の重症度と治療ラインについて単変量解析した結果、低マグネシウム血症がgrade 3未満 (139例) では1st-line / 2nd-lineが30例、3rd-line以降が109例であり、grade 3以上 (18例) ではそれぞれ1例および17例と、低マグネシウム血症の重症度にかかわらず3rd-line以降の患者に多く認められた。ざ瘡様皮疹の重症度については、grade 3未満 (167例) では治療ライン別にそれぞれ41例および126例、grade 3以上 (28例) では2例および26例と、grade 3以上のざ瘡様皮疹は3rd-line以降で高いことが示された (p=0.050) (表3) 。さらに、Pmabの累積投与量中央値は、ざ瘡様皮疹がgrade 3未満の症例では36.0mg/m2、grade 3以上の症例では48.0mg/m2と、grade 3以上のざ瘡様皮疹が発現した症例では、Pmabが多く投与されていた (p=0.057) 。
有害事象の重症度と治療ラインについて単変量解析した結果、低マグネシウム血症がgrade 3未満 (139例) では1st-line / 2nd-lineが30例、3rd-line以降が109例であり、grade 3以上 (18例) ではそれぞれ1例および17例と、低マグネシウム血症の重症度にかかわらず3rd-line以降の患者に多く認められた。ざ瘡様皮疹の重症度については、grade 3未満 (167例) では治療ライン別にそれぞれ41例および126例、grade 3以上 (28例) では2例および26例と、grade 3以上のざ瘡様皮疹は3rd-line以降で高いことが示された (p=0.050) (表3) 。さらに、Pmabの累積投与量中央値は、ざ瘡様皮疹がgrade 3未満の症例では36.0mg/m2、grade 3以上の症例では48.0mg/m2と、grade 3以上のざ瘡様皮疹が発現した症例では、Pmabが多く投与されていた (p=0.057) 。

切除不能進行・再発大腸癌の日常臨床において、Pmabは全般的に管理可能であった。なお、これまでの報告と比べ、低マグネシウム血症とざ瘡様皮疹が多くみられ、grade 3以上のざ瘡様皮疹は、1st-line / 2nd-lineよりも、3rd-line以降に多い傾向がみられた。
Reference
1) Hamaguchi T, et al.: 2013 Gastrointestinal Cancers Symposium: abst #525 [学会レポート]
2) Douillard JY, et al.: J Clin Oncol. 28(31): 4697-4705, 2010 [PubMed]
3) Peeters M, et al.: J Clin Oncol. 28(31): 4706-4713, 2010 [PubMed]
4) van Cutsem E, et al.: J Clin Oncol. 25(13): 1658-1664, 2007 [PubMed]
1) Hamaguchi T, et al.: 2013 Gastrointestinal Cancers Symposium: abst #525 [学会レポート]
2) Douillard JY, et al.: J Clin Oncol. 28(31): 4697-4705, 2010 [PubMed]
3) Peeters M, et al.: J Clin Oncol. 28(31): 4706-4713, 2010 [PubMed]
4) van Cutsem E, et al.: J Clin Oncol. 25(13): 1658-1664, 2007 [PubMed]
関連リンク
・2011年 米国臨床腫瘍学会年次集会 abst #3510 「切除不能進行・再発大腸癌初回治療例に対するPanitumumab + FOLFOX4療法とFOLFOX4療法の無作為化比較第III相試験 (PRIME試験): 最終報告」
・2012年 消化器癌シンポジウム abst #387 「切除不能進行・再発大腸癌2nd-line治療例に対するPanitumumab + FOLFIRI療法とFOLFIRI療法の無作為化比較第III相試験 (20050181試験) :最終報告」
・ESMO 2012 abst #587P 「日本人治癒切除不能大腸癌患者におけるPanitumumabの製造販売後調査:中間報告(3,005例)」
・副作用対策講座 第1回「皮膚障害-1 分子標的薬の皮膚障害」
・2013年 消化器癌シンポジウム abst #541 「切除不能進行・再発大腸癌におけるPanitumumabの有効性と安全性に関するレトロスペクティブ・コホート試験: HGCSG 1002試験 〜Cetuximab不応患者に対するPanitumumabの有効性と安全性の解析結果〜」
・2013年 消化器癌シンポジウム abst #593「切除不能進行・再発大腸癌におけるPanitumumabの有効性と安全性に関するレトロスペクティブ・コホート試験: HGCSG 1002試験 〜臨床におけるPanitumumab投与早期の効果予測因子に関する解析結果〜」
・2011年 米国臨床腫瘍学会年次集会 abst #3510 「切除不能進行・再発大腸癌初回治療例に対するPanitumumab + FOLFOX4療法とFOLFOX4療法の無作為化比較第III相試験 (PRIME試験): 最終報告」
・2012年 消化器癌シンポジウム abst #387 「切除不能進行・再発大腸癌2nd-line治療例に対するPanitumumab + FOLFIRI療法とFOLFIRI療法の無作為化比較第III相試験 (20050181試験) :最終報告」
・ESMO 2012 abst #587P 「日本人治癒切除不能大腸癌患者におけるPanitumumabの製造販売後調査:中間報告(3,005例)」
・副作用対策講座 第1回「皮膚障害-1 分子標的薬の皮膚障害」
・2013年 消化器癌シンポジウム abst #541 「切除不能進行・再発大腸癌におけるPanitumumabの有効性と安全性に関するレトロスペクティブ・コホート試験: HGCSG 1002試験 〜Cetuximab不応患者に対するPanitumumabの有効性と安全性の解析結果〜」
・2013年 消化器癌シンポジウム abst #593「切除不能進行・再発大腸癌におけるPanitumumabの有効性と安全性に関するレトロスペクティブ・コホート試験: HGCSG 1002試験 〜臨床におけるPanitumumab投与早期の効果予測因子に関する解析結果〜」