背景と目的
胃癌では、これまで1st-line治療において予後因子の検討がなされてきたが1,2)、2nd-line治療については少数例の検討にとどまっている3)。一方、進行胃癌・胃食道接合部腺癌の2nd-line治療においてRamucirumabの第III相無作為化二重盲検比較試験としてREGARD試験 (n=355) 4) およびRAINBOW試験 (n=665) 5) が実施され、合計1,020例が登録されたことから、これら2試験の患者データのプール解析より、胃癌2nd-line治療の予後因子が検討された。
対象と方法
REGARD試験およびRAINBOW試験 (図1) の血液検査等を含めた患者データに関して、年齢やPS、転移個数や腹膜播種の有無などの患者背景19項目も含めた合計41因子を抽出し、全生存期間に関与している因子をCox比例ハザードモデルで検討した。
図1
結果
Cox単変量解析により、患者背景から5因子 (原発巣の有無、腫瘍分化度、PDまでの期間、PS、腹膜播種の有無) (表1)、血液検査値から7因子 (ALP、リンパ球数、LDH、アルブミン、AST、好中球数、ナトリウム) の合計12因子を抽出した。
表1
Cox多変量解析により、12因子のハザード比はいずれもおよそ1.3-2.0であった (表2)。
表2
予測スコアは12因子のうちナトリウム以外は同じeffect sizeとし、スコア数より予後Indexとして4つのRisk groupを作成した (Low: 0-2, Medium: 3-4, Moderate: 5-6, High: 7-13)*。Risk group別OS中央値はLow群14.46ヵ月からHigh群3.35ヵ月と広範囲となり、生存曲線も4群に分離した (図2)
図2
*1,020例のうち、12因子のデータがなかった患者を除き、953例 (93%) について予後IndexによるRisk groupを作成した。
結論
2つの第III相無作為化二重盲検比較試験 (REGARD試験およびRAINBOW試験) を用いて、胃癌の2nd-line治療における12個の予後因子を同定した。今回のデータは、臨床現場における判断や今後の臨床試験の方向性の位置付けに役立つ可能性がある。
コメント
Ramucirumabは最近我が国でも胃癌に対して承認が得られたが、現時点で治療効果と関連するバイオマーカーは確立されていない。本研究では患者背景因子、血液検査値からの治療効果予測に関して検討がなされた。面白いことに血清ナトリウム値が最もハザード比の高い因子として選択され、それ以外の11因子と共にスコア化することにより治療効果の予測が可能であった。試験間で差が認められず、再現性の高い予測法と思われる。今回も検討されていたが、血清で診断が可能となるような治療効果に関連するバイオマーカーの確立が切望される。
(レポート:川崎 健太 監修・コメント:寺島 雅典)
- Reference
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- 1) Chau I, et al.: J Clin Oncol. 22(12): 2395-2403, 2004[PubMed]
- 2) Chau I, et al.: J Clin Oncol. 27(19): e3-e4, 2009[PubMed]
- 3) Kanagavel D, et al.: Ann Oncol. 21(9): 1779-1785, 2010[PubMed]
- 4) Fuchs CS, et al.: Lancet. 383(9911): 31-39, 2014[PubMed][論文紹介]
- 5) Wilke H, et al.: Lancet Oncol. 15(11): 1224-1235, 2014[PubMed][論文紹介]