吉野:new EPOC試験は切除可能および切除可能境界の大腸癌肝転移に対し、肝切除前後の化学療法にCetuximabを上乗せすることで予後が改善するか評価した試験です。化学療法はFOLFOX4、CAPOX、そしてL-OHP既治療例ではFOLFIRIが選択されています。
結果は残念なことにnegativeでした。主要評価項目のPFS中央値は、化学療法群20.5ヵ月に対してCetuximab併用群14.1ヵ月とCetuximab併用群で有意に低値であり (HR=1.49, p=0.030)、OSもCetuximab併用群で下回る傾向にありました (HR=1.48, p=0.163)。

Douillard:経口フッ化ピリミジン製剤と抗EGFR抗体薬とは薬物相互作用が認められるため、これまでにCOIN試験、そしてUFT + L-OHP + Cetuximabの併用レジメンを検討したFUTURE試験5) がnegativeに終わっています。したがって、new EPOC試験ではCapecitabineを併用したことが影響しているではと考えます。
吉野:COIN試験では、Cetuximab併用のCAPOXは不良だったもののFOLFOXは良好だったため、経口フッ化ピリミジン製剤 + L-OHPはCetuximabのベストパートナーではないと考えていました。しかし、new EPOC試験のforest plotを見ると、Cetuximab併用群で良好なのはFOLFIRIのみで、CAPOXおよびFOLFOXともに不良です。この結果をどのように考えればよろしいでしょうか。
Douillard:今回のFOLFOX併用は155例です。COIN試験やOPUS試験、そして同じ抗EGFR抗体薬のPanitumumabのPRIME試験ではFOLFOX併用で有効性を示しているので、この試験の結果のみで判断するのは早計です。
吉野:英国の試験は、COIN試験も含め議論を呼ぶことが多いですね。FOLFOX + 抗EGFR抗体薬について、別の角度からもう1点お伺いします。PRIME試験では切除不能例におけるFOLFOX + 抗EGFR抗体薬の有効性が示されましたが、new EPOC試験では切除可能および切除可能境界肝転移に対してFOLFOX + 抗EGFR抗体薬が不良という結果でした。FOLFOX + 抗EGFR抗体薬が有効性を示す「境界」は存在するのでしょうか。
Douillard:そのような「境界」が存在するとは考えていません。PRIME試験やCELIM試験では実際に肝切除が行われており、PRIME試験における肝限局転移例のR0切除率は、FOLFOX群18%に対してFOLFOX + Panitumumab群では28%を示しています。
吉野:確かにCELIM試験を実施されたFolprecht先生から「CELIM試験においてFOLFOX + Cetuximabは、切除不能症例、R0切除が可能になった症例ともに有効であった」と伺いました。new EPOC試験の解釈は非常に難しいですが、NRAS やminor KRAS 変異に関する追加解析が行われるようなので、続報を待ちたいと思います。