GI cancer-net 海外学会速報レポート 2013年6月 シカゴ 特別企画座談会 切除不能大腸癌1st-line治療は変わるか?

DISCUSSION 1st-line、術前術後補助化学療法における抗EGFR抗体薬

1st-line治療におけるBevと抗EGFR抗体薬の比較:FIRE-3試験より

FIRE-3試験におけるOSの検討

吉野:それでは、今年の米国臨床腫瘍学会で報告された1st-line 治療に関連する2つの試験について議論を深めていきたいと思います。まず、KRAS 野生型の切除不能大腸癌1st-lineにおいてBevとCetuximabとを比較したFIRE-3試験です。

目標症例数は750例で、FOLFIRI + Bev群とFOLFIRI + Cetuximab群とに1:1に無作為に割り付けられました。主要評価項目は奏効率、副次評価項目はPFS、OS、R0切除率、安全性などです。結果はご存知の通り、主要評価項目のITT解析における奏効率はBev群58.0%、Cetuximab群62.0%と有意差を認めませんでしたが (p=0.183)、評価可能例 (ベースラインから3サイクル以上の化学療法とCT検査1回を施行) における奏効率はBev群63.1%に対してCetuximab群72.2%と有意差を認めました (p=0.017)。

また、PFSのKaplan-Meier曲線は類似しており、中央値はBev群10.3ヵ月、Cetuximab群10.0ヵ月とほぼ同等でしたが (p=0.547)、OS中央値はBev群25.0ヵ月に対してCetuximab群28.7ヵ月と、Cetuximab群で有意な延長を認めました (p=0.017) (図9)。Douillard先生はこの結果をどのように解釈されますか。

Douillard:Cetuximab群でOSが良好であった理由として、2つの仮説が考えられます。1つは2nd-lineの影響です。本試験では、Cetuximab群の2nd-lineにFOLFOX + Bevが施行されています。FOLFOX + Bevの2nd-line治療についてはE3200試験で良好な成績が報告されています。もう1つのポイントは、抗EGFR抗体薬のre-challengeです。Cetuximab群では、1st-lineにおいてCRYSTAL試験でOSの延長を示したFOLFIRI + Cetuximabを行い、2nd-lineではE3200試験で有効性を示したFOLFOX + Bevを行い、さらに抗EGFR抗体薬のre-challengeも行えるわけです。

吉野:確かにE3200試験では、FOLFOX群に対するFOLFOX + Bev群のHRは0.75を示しました。

Douillard:いずれにしても2nd-line以降のレジメンに関する情報が必要です。Bev群の2nd-lineは42.9%が抗EGFR抗体薬を使用していますが、2nd-lineにおけるFOLFOX + 抗EGFR抗体薬のエビデンスはありません。

設楽 紘平先生

設楽:私もDouillard先生のご意見に同感です。特に2nd-lineは重要だと考えているので、報告を待ちたいと思います。

吉野:FIRE-3試験の結果は、先ほどDouillard先生から発表いただいたPEAK試験の結果と類似しており、一貫したエビデンスになりますね。

Douillard:PEAK試験FIRE-3試験ともに、奏効率は抗EGFR抗体薬がわずかに良好であり、PFSに差はみられませんでした。また、OSに関してもPEAK試験のHRは0.72、FIRE-3試験は0.77なので、同様の結果といえるでしょう。PEAK試験は、今回RAS statusにおける検討について発表されましたが、FIRE-3試験でも検討する必要があります。

吉野:そうですね。実際に、NRAS とminor KRAS 変異についての追加解析を報告する予定はあるようです。そして今後、NRAS およびminor KRAS 検査のためのインフラ整備を進めなくてはなりません。

CetuximabとPanitumumabの違いについて

吉野:かつてはCetuximabとPanitumumabは同様の薬剤であるとされていましたが、CRYSTAL試験とPRIME試験の結果から、CetuximabはFOLFIRIが、PanitumumabはFOLFOXが最適な併用レジメンであると考えられています。その点についてDouillard先生はどのようにお考えですか。

Professor Jean-Yves Douillard

Douillard:私はCetuximabおよびPanitumumabに対するFOLFOXとFOLFIRIの相性は同等と考えています。CetuximabとPanitumumabの違いについては、近く発表予定の3rd-lineにおけるCetuximab単剤とPanitumumab単剤とを比較したASPECCT試験3) の結果を待つ必要があるでしょう。

設楽:先日、Amgen社から、OSのHR=0.966 (95% CI: 0.839-1.113) で非劣性が証明されたとの発表がありました4)

Douillard:ASPECCT試験では、S492RなどEGFR変異の検討もされる予定です。

吉野:Douillard先生ご自身は、1st-lineではPanitumumabをご使用ですか。

Douillard:当院ではアナフィラキシーショック対策として、Cetuximabの初回投与から3回目の投与までは一日入院していただくことになっています。一方、Panitumumabはinfusion reactionの発現頻度が低く、2週間ごとの投与であるため簡便で、外来で使用できるため、よく用いています。

吉野:Panitumumabを使用する際の併用レジメンはFOLFOXでしょうか。

Douillard:そうです、1st-lineではFOLFOXと併用します。欧州におけるPanitumumab併用レジメンは、1st-lineではFOLFOX + Panitumumab、2nd-lineではFOLFIRI + Panitumumabと規定されています。

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