吉野:まずCase 1について、治療開始時点の2005年は分子標的薬を使用できませんでしたが、もしこの症例がKRAS 野生型であった場合、現在ではどのようなレジメンを使用しますか。
Douillard:私はFOLFOX + PanitumumabもしくはFOLFIRI + Cetuximabを用います。
吉野:PRIME試験やCRYSTAL試験の結果を踏まえると、その選択になりますね。設楽先生はいかがでしょうか。
設楽:私はFOLFOX + PanitumumabもしくはFOLFOX + Cetuximabを選択します。

高橋:私も同様に、FOLFOX + PanitumumabやFOLFOX + Cetuximabを使用します。
吉野:肝切除までの化学療法サイクル数についてご意見いただけますか。
Douillard:フランスの外科医はL-OHPの肝障害を危惧しており、肝切除を行う場合、FOLFOXは6サイクルまでと考えています。
高橋:基本的にはR0切除可能と判断した時点で肝切除を行うこととしています。抗EGFR抗体薬を用いると、当科の治療成績では約6サイクルでR0切除に持ち込めています。また、肝切除後の重篤な合併症はみられませんでした。
吉野:続いてCase 2についてお伺いします。Douillard先生は術後補助化学療法にはどのようなレジメンを用いられますか。
Douillard:術後補助化学療法におけるCetuximabの上乗せがN0147試験で否定されたので、分子標的薬の使用については否定的で、FOLFOXを施行します。Conversion therapyとしてFOLFOX + Panitumumabを3ヵ月、術後補助化学療法としてFOLFOXを3ヵ月施行するのが基本です。
設楽:岐阜大学での後ろ向き解析について伺いますが、conversion therapyでR0切除を達成した患者の再発率はどの程度ですか。
高橋:R0手術を施行しても約7割に再発を認めています。しかし先程も述べたようにR0手術可能となった34例にconversionを行いましたが、生存期間は有意に延長していました。