GI cancer-net 海外学会速報レポート 2013年6月 シカゴ 特別企画座談会 切除不能大腸癌1st-line治療は変わるか?

Short Lecture-1 KRAS野生型切除不能大腸癌のグループ1に対する1st-line治療戦略 / 高橋 孝夫先生

グループ1に対するconversion therapy

ESMOガイドラインでグループ1と定義されたKRAS 野生型切除不能大腸癌に対しては、conversion therapyが考慮されるため、最大限の腫瘍縮小を得られるよう併用療法を行う必要があります。本Short Lectureでは、巨大な肝転移を認める大腸癌で、化学療法によって腫瘍縮小が得られた3症例とともに、当院の後ろ向き解析データを紹介します。

Case 1:分子標的薬登場前の肝転移治療

Case 1は48歳の男性であり、2005年9月に横行結腸の部分切除を実施しました。外科的な診断は横行結腸癌、SE (癌が漿膜表面に露出:T4a)、N2 (リンパ節転移数4個以上)、P0 (腹膜転移なし)、H3 (肝転移巣5個以上かつ最大径5cm以上)、stage IVです。CT検査では6ヵ所に肝転移を認め、最大径は8cmでした (図6)。

この症例を治療した2005年はまだ分子標的薬を使用できなかったため、FOLFOX4を選択しました。FOLFOX4によって肝転移は大幅に縮小し、8サイクル施行時点で縮小率83% (抗腫瘍効果PR) が得られました (図7)。そして、9サイクル施行後に切除可能性を再評価し、2006年3月に肝部分切除 (S4、S5、S8) を実施し、肝切除術後に6サイクルのFOLFOX4を施行しました。2009年2月、S4に単発の肝転移が認められたため、同3月に肝左葉切除を行いました。その後、4年3ヵ月にわたり再発は認められず、初回手術後7年9ヵ月生存しています。

Case 2:分子標的薬時代の肝転移治療

Case 2は64歳の女性です。下行結腸癌で、SS (固有筋層を越えて浸潤しているが、漿膜表面に露出していない)、N1 (リンパ節転移数3個以下)、H3、P0、M0 (肝以外遠隔転移なし)、stage IVであり、2010年12月に原発巣の切除術が行われました。肝転移は両葉に認められ、最大径は約6cmで、KRAS 野生型であったことからmFOLFOX6 + Cetuximabが選択されました。2サイクル施行後には56%の腫瘍縮小(治療早期に著明な縮小)が得られましたが、3サイクル施行後にinfusion reactionが認められたので、以降はmFOLFOX6のみを施行しています。そして5サイクル後に65%の縮小が認められたため (図8)、6サイクル施行後に肝切除術を施行し、術後補助化学療法として12サイクルのFOLFOXを施行しました。肝切除術後1年11ヵ月(初回手術後2年5ヵ月)にわたり再発を認めていません。

岐阜大学におけるconversion therapyの後ろ向き解析

岐阜大学の後ろ向き解析では、切除不能大腸癌症例に対し化学療法を試みた225例の患者のうち34例 (15.1%) がR0切除を達成し、このうち肝切除術施行例は24例 (70.6%) を占めます。まだ解析中のデータですが、追跡期間中央値55.3ヵ月時点のOS中央値はR0切除達成群72.7ヵ月、非達成群22ヵ月と、前者で有意に良好でした (p<0.0001)。使用レジメン別のR0切除達成率は、化学療法単独 (FOLFOX / XELOX) が16.7%、Bev併用 (FOLFOX / XELOX / SOX) が9.5%、抗EGFR抗体薬併用 (FOLFOX) が47.1%と、抗EGFR抗体薬の併用により良好な結果が得られています。

以上の結果から、切除不能大腸癌でconversion therapyが可能であった患者はOSが有意に良好であることが明らかになりました。また、conversion therapyでは高い腫瘍縮小率と迅速な抗腫瘍効果が期待できる抗EGFR抗体薬併用レジメンを選択すべきと考えられます。

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