グループ3に対する使用レジメン

吉野:ありがとうございました。Douillard先生にご質問はありますか。
設楽:グループ3に対する2剤併用レジメンは、何を選択しますか。
Douillard:XELIRIもしくはXELOXを使用することが多いです。
設楽:分子標的薬の併用は考慮されませんか。
Douillard:Bevについては、OSを延長するのか疑問を抱いているので、基本的に使用しません。抗EGFR抗体薬は、皮膚障害などによるQOLの低下が懸念されるため、グループ3の1st-line治療では使用せず、後治療において単剤療法で使用します。
吉野:日本では、グループ3の1st-lineに対して、導入療法としてFOLFOXなどを使用することが多いです。ところで、先生はBevの併用は全く行わないのでしょうか。
Douillard:高齢者に対してCapecitabine + Bevを使用したことがあります。先日のGastrointestinal Cancers Symposiumでは同様の試験が発表されました。
吉野:AVEX試験ですね。未治療の70歳以上の患者を対象としてCapecitabine単剤とCapecitabine + Bevを比較したところ、PFSは有意に延長し (HR=0.53, p<0.001)、OSも良好な傾向でした (HR=0.79, p=0.182) 2)。
NRAS ・minor KRAS 検査の位置づけ
吉野:NRAS ・minor KRAS 変異についてお聞きします。今回のPRIME試験やPEAK試験の結果を受けて、Panitumumabの添付文書は変更される可能性はあるのでしょうか。
Douillard:米国FDAもEMAも高い関心を示しており、検討対象となるでしょう。
吉野:同じ抗EGFR抗体薬であるCetuximabのRAS 解析も近く発表されるのでしょうね。
Douillard:私もそう願っていますが、CRYSTAL試験やOPUS試験では検体組織が残っていません。COIN試験やnew EPOC試験については一部組織が入手できるようなので、今後の検討に期待したいと思います。
吉野:今回、NRAS ・minor KRAS 変異の検出には、サンガー法によるDNAシークエンシングとWAVE based SURVEYOR® Scan Kitの2つが使用されています。後者は時間がかかり、大量のDNAを使用しますね。
Douillard:SURVEYOR® Scan Kitのほうが鋭敏ですが、得られる結果は両検査でほぼ一致しています。そのため現在は、サンガー法を選択することが多いです。
吉野:近い将来、数多くの有望なバイオマーカーが実地臨床に導入されるでしょう。多くの遺伝子変異を検査する場合、サンガー法でも大量のDNAが必要になります。今後は、簡便な方法に加え、微量DNAによる検査が必要になると思います。
BRAF 変異に基づく治療
吉野:BRAF 変異型に対する治療について、Douillard先生のお考えをお聞かせください。
Douillard:今回のPRIME試験の解析では、BRAF 変異型におけるOS中央値はFOLFOX4群9.2ヵ月、Panitumumab併用群10.5ヵ月と、Panitumumab併用により良好な傾向が認められています。つまり、BRAF は効果予測因子ではなく、予後予測因子と言えます。なお、BRAF 阻害剤のSorafenibによる検討も納得のいく結果は得られていないため、現在のところ当院ではBRAF 阻害剤を使用していません。
吉野:本学会ではBRAF 変異型に対するBRAF 阻害剤とMEK阻害剤の併用療法の有効性が報告されました (#3507)。また、BRAF 阻害剤 + MEK阻害剤にPanitumumabを併用する試験も進行しています。将来的に、BRAF 変異型大腸癌に対してこれらの治療法が用いられるとお考えですか。
Douillard:将来的には可能性はあると思います。ただ、現状ではまだBRAF 阻害剤の使用は難しいです。