GI cancer-net 海外学会速報レポート 2013年6月 シカゴ 特別企画座談会 切除不能大腸癌1st-line治療は変わるか?

Special Lecture 欧州におけるKRAS野生型切除不能大腸癌の1st-line戦略 / Jean-Yves Douillard, MD, PhD

ESMOガイドラインにおける1st-line治療戦略

4つのグループに分けた治療戦略

最後に、2012年10月に発表されたESMOガイドラインについて紹介します。このガイドラインは、大腸癌患者を4つのグループに分けているのが特徴です (図4)。

グループ0は、R0切除可能な肝転移または肺転移を有する患者です。治療目的は治癒や再発率の低下であり、intensiveな治療は必要なく、EORTC 40983試験において術前術後補助化学療法の有効性が示されたFOLFOXが用いられます。一方、潜在的に切除可能な転移巣を有するグループ1では、conversion therapyを念頭に、高い奏効率を得られる併用レジメンを用いるべきです。これは、多発性の転移巣や急速な増悪を認めるグループ2においても同様で、PSや症状を改善し、腫瘍増殖を抑制する併用レジメンを用います。切除不能であっても腫瘍増殖の遅いグループ3に対しては、多くの治療選択肢があります。Capecitabine、UFT、5-FU静注などの単剤療法を先行させ、増悪を認めた際に毒性の低い併用療法を用いる逐次的なアプローチがとられることもありますし、場合によっては、症状が発現するまで経過観察することもあるでしょう。

各グループにおける治療

各グループに対する治療では、第一段階として、40%の患者で変異の認められるKRAS exon 2変異の検査を行う必要があります。また、今回のPRIME試験PEAK試験の結果も考慮し、今後はRAS statusに基づくレジメンの決定も重要になるでしょう。グループ1のKRAS 野生型ではconversion therapyを念頭に外科医にコンサルトすることが望まれます。また、使用するレジメンは、奏効率において一貫したbenefitを示している抗EGFR抗体薬を強く推奨しています。グループ2のKRAS 野生型における推奨治療は基本的にグループ1と同様に、抗EGFR抗体薬併用レジメンです。Intensiveな治療によりグループ1に移行し、手術が検討される可能性もあります。

ガイドラインのconsensus会議では、グループ3においては5-FUなどの単剤療法に留める意見が多く、推奨治療とされました。ただ、単剤療法により増悪した場合、PSの悪化により2剤併用療法を用いる機会を逃してしまう可能性もあるため、個人的には2剤併用レジメンを推奨します。そして、4サイクル後に増悪が認められない場合には、すべての薬剤を休薬するGISCAD試験に基づいたstop-and-go方式をとります。その後、2ヵ月ごとにCT検査を行い、増悪が認められなければ治療は再開しません。グループ3の治療目標は、OS延長とQOL維持です。すべての薬剤を中止することで患者の負担を軽減することが大切だと考えます。

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