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1月
愛知県がんセンター 薬物療法部 医長 谷口 浩也

胃癌 食道胃接合部癌

HER2陰性切除不能進行再発胃/食道胃接合部腺癌の1次治療におけるプラチナ含有レジメンへのPembrolizumabの上乗せ(KEYNOTE-859)


Sun Young Rha, et al.: Lancet Oncol. 24(11): 1181-1195, 2023

 近年、HER2陰性胃および食道胃接合部腺癌の1次治療において、プラチナ製剤とフッ化ピリミジンの併用療法への抗PD-1(programmed cell death-1)抗体薬併用が生存期間の延長をもたらしたという複数のglobal第III相試験が報告された。Nivolumabの上乗せを検討したCheckMate 649試験1)やATTRACTION-4試験2)、Sintilimabの上乗せを検討したORIENT-16試験3)、Tislelizumabの上乗せを検討したRATIONALE 305試験4)がその代表であり、特にPD-L1 combined positive score(CPS)≧5の集団において有効性が示された。本邦では2021年11月よりNivolumabと化学療法の併用が保険償還され、現在の標準治療となっている。

 KEYNOTE-062試験5)では、主要評価項目がPD-L1 CPS≧1とPD-L1 CPS≧10の患者における全生存期間(OS)、CPS≧1の患者における無増悪生存期間(PFS)と設定され、化学療法群に対するPembrolizumab+化学療法群の優越性および化学療法群に対するPembrolizumab群の非劣性が検証されたが、Pembrolizumab+化学療法群では化学療法群と比較して良好な生存期間を示したものの、事前に複数のエンドポイントを設定したことなども影響し、統計学的な有意差を示すことができなかった。

 そこで統計学的設定や併用レジメンを改め、Pembrolizumabの化学療法への上乗せ効果を検討する二重盲検無作為化第III相試験、KEYNOTE-859試験が行われた。

 本試験は33ヵ国207施設にて実施され、未治療でHER2陰性の切除不能局所進行または転移性胃および食道胃接合部腺癌の患者を対象とした。併用化学療法は分担医師判断でFP療法[5-FU(800mg/m2、day 1-5、3週毎、投与サイクル上限なし)+Cisplatin(80mg/m2、day 1、3週毎、6サイクルまで)]、またはCAPOX療法[Capecitabine(1,000mg/m2/回、1日2回内服、day 1-14、3週毎、投与サイクル上限なし)+Oxaliplatin(130mg/m2、day 1、3週毎、6サイクルまで)]から選択の上、Pembrolizumab群にはPembrolizumab 200mg、プラセボ群にはプラセボが3週毎に投与された。患者はPembrolizumab+化学療法群(Pembro群)とプラセボ+化学療法群(プラセボ群)へ、PD-L1 CPS(<1 or ≧1)、地域、併用化学療法により層別化の上、1:1に割り付けられた。主要評価項目はOS、副次評価項目はPFS、客観的奏効割合(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性であり、OS、PFS、ORRはITT、PD-L1 CPS≧1、PD-L1 CPS≧10の集団でそれぞれ評価された。Maurer and Bretzのグラフィカルアプローチにより中間解析(PD-L1 CPS≧10の集団でのOSイベントが約403例発生し、最後の参加者の割付後約12ヵ月経過時点と規定)および最終解析において第一種過誤(αエラー)が片側0.025に制御され、ITT集団におけるOSの検定に0.008が、PD-L1 CPS≧10の集団におけるOSの検定に0.017が割り振られた。その後PD-L1 CPS≧1の集団でのOSは、PD-L1 CPS≧10の集団のみの帰無仮説が棄却された場合は片側α=0.017で検定、ITTとPD-L1 CPS≧10双方の帰無仮説が棄却された場合は片側α=0.025で検定可能とした。

 2018年11月8日から2021年6月11日の間に、2,409例がスクリーニングされ、1,579例がそれぞれPembro群(790例)、プラセボ群(789例)に無作為化割付された。ITT集団において、78%はPD-L1 CPS≧1であり、35%はPD-L1 CPS≧10であった。患者背景は概ね両群で均衡が取れており、Pembro群とプラセボ群でそれぞれ34%と34%がアジア人、64%と62%がPS 1、78%と79%が原発巣非切除例であった。化学療法は、両群ともに86%がCAPOXを選択された。MSI statusは両群ともに14%が不明であった。

 ITT集団において、追跡期間中央値は31.0ヵ月、データカットオフ時点でPembro群とプラセボ群でそれぞれ87%、94%でプロトコール治療が中止された。うち病勢増悪によるものが53%、60%と最多であり、45%、47%が後治療へと移行した。データカットオフ時点でPembro群とプラセボ群でそれぞれ76%、84%が死亡した。

 OS中央値はITT集団において、Pembro群で12.9ヵ月(95% CI: 11.9-14.0)、プラセボ群で11.5ヵ月(95% CI: 10.6-12.1)、HR=0.78(95% CI: 0.70-0.87、p<0.0001)であり、Pembro群のほうが有意に良好であった。PD-L1 CPS≧1の集団においてはPembro群で13.0ヵ月(95% CI: 11.6-14.2)、プラセボ群で11.4ヵ月(95% CI: 10.5-12.0)、HR=0.74(95% CI: 0.65-0.84、p<0.0001)、PD-L1 CPS≧10の集団においてはPembro群15.7ヵ月(95% CI: 13.8-19.3)、プラセボ群11.8ヵ月(95% CI: 10.3-12.7)、HR=0.65(0.53-0.79、p<0.0001)と、全てのサブグループにおいてPembro群が有意に良好な結果であった。

 PFS中央値はITT集団において、Pembro群で6.9ヵ月(95% CI: 6.3-7.2)、プラセボ群で5.6ヵ月(95% CI: 5.5-5.7)、HR=0.76(95% CI: 0.67-0.85、p<0.0001)、PD-L1 CPS≧1の集団においてPembro群で6.9ヵ月(95% CI: 6.0-7.2)、プラセボ群で5.6ヵ月(95% CI: 5.4-5.7)、HR=0.72(95% CI: 0.63-0.82、p<0.0001)、PD-L1 CPS≧10の集団においてPembro群で8.1ヵ月(95% CI: 6.8-8.5)、プラセボ群で5.6ヵ月(95% CI: 5.4-6.7)、HR=0.62(95% CI: 0.51-0.76、p<0.0001)であり、こちらもすべてにおいてPembro群で有意に良好な結果であった。

 ORRはITT集団において、Pembro群で51%[完全奏効(CR)9%、部分奏効(PR)42%]に対し、プラセボ群で42%(CR 6%、PR 36%)、群間差9.3%(95% CI: 4.4-14.1、p<0.0001)であった。そのほか、PD-L1 CPS≧1の集団において、Pembro群で52%(CR 10%、PR 42%)、プラセボ群で43%(CR 6%、PR 37%)、群間差9.5%(95% CI: 3.9-15.0、p=0.0004)、PD-L1 CPS≧10の集団において、Pembro群で61%(CR 13%、PR 48%)、プラセボ群で43%(CR 5%、PR 38%)、群間差17.5%(95% CI: 9.3-25.5、p<0.0001)であった。

 DOR中央値はITT集団においてPembro群で8.0ヵ月(95% CI: 7.0-9.7)、プラセボ群で5.7ヵ月(95% CI: 5.5-6.9)と、Pembro群で良好であった。PD-L1 CPS≧1の集団ではPembro群で8.3ヵ月(95% CI: 7.0-10.9)、プラセボ群で5.6ヵ月(95% CI: 5.4-6.9)、PD-L1 CPS≧10の集団ではPembro群で10.9ヵ月(95% CI: 8.0-13.8)、プラセボ群で5.8ヵ月(95% CI: 5.3-7.0)であった。

 有害事象はPembro群とプラセボ群でそれぞれ99%と98%に認め、うち治療関連有害事象は96%と94%、grade 3以上の治療関連有害事象は59%と51%、治療中止に至った有害事象は、26%と20%であった。頻度が高い治療関連有害事象は悪心(41%/41%)、下痢(32%/27%)、貧血(31%/27%)、好中球数減少(24%/22%)などであった。免疫関連と推定された有害事象はPembro群とプラセボ群で27%と9%、うちgrade 3以上は8%と2%で認め、頻度の多いものは甲状腺機能低下症(15%/4%)、甲状腺機能亢進症(6%/2%)、大腸炎(3%/2%)であった。治療関連有害事象による死亡は、Pembro群で8例(1%)、プラセボ群で16例(2%)において認めた。

 以上より、ITT集団、PD-L1 CPS≧1の集団、PD-L1 CPS≧10の集団すべてにおいて、Pembro群はプラセボ群と比較して事前の統計学的設定を満たし、OSの有意な改善を認めた。また本試験ではPD-L1 CPSが高くなるほどOS、PFS、ORR、DORにおけるPembrolizumabの上乗せ効果が高くなる傾向を認めた。Pembrolizumab+化学療法は切除不能進行再発胃/食道胃接合部癌の1次治療において、有効な選択肢の一つになりうると考えられる。


日本語要約原稿作成:慶應義塾大学病院 消化器内科 津軽 開



監訳者コメント:
Pembrolizumabの使い所は!?

 PembrolizumabがやっとHER2陰性胃癌の1次治療で使用できるようになりそうだ。KEYNOTE-062の結果との乖離については、複雑な統計設定の影響、あるいは併用した化学療法のimmunologic cell deathの誘導性の違いなどが想定されているが、いずれにしてもKEYNOTE-859試験はPD-L1 CPSに関わらないITT集団において、化学療法単独群に対するPembrolizumab併用群におけるOSの延長を統計学的に証明した。化学療法+Nivolumabの有効性を証明したCheckMate 649試験のprimary endpointはCPS≧5の集団での結果であり、CPSに関わらずPembrolizumabの上乗せ効果が証明できたことはこの試験を理解する上でのポイントの一つとなる。ただし、本試験においてもやはり有効性はCPS依存的であろうことが見て取れる。サブ解析を見ると、CPS≧10や1~9ではPembrolizumabの上乗せ効果が明らかであるが、CPS<1ではハザード比は1を跨いでいる。胃癌における化学療法+免疫チェックポイント阻害剤のレジメンにおけるCPS依存傾向は他の試験と同様であり、CPS≧5、<5でNivolumabとPembrolizumabを使い分けるという戦略はナンセンスだ。それではどのようにこの免疫チェックポイント阻害剤2剤を使い分けるかが問題となるわけだが、現時点でPembrolizumabを積極的に使用すべき状況は限られるのではなかろうか。併用できる化学療法はNivolumabにおいてはATTRACTION-4試験の結果と合わせてSOX、CapeOX、FOLFOXが使用できる。PembrolizumabはCapeOXかFPであり、本邦では大部分がCapeOXとなるだろう。すでに使い慣れたNivolumabをあえてPembrolizumabに変更する強い動機が現時点では見つからない。ただし、将来的には頻用される可能性がある。KEYNOTE-811試験はHER2陽性胃癌に対する標準治療である化学療法+TrastuzumabにPembrolizumabの上乗せ効果をみた試験であるが、中間解析でPFSとORRの良好な結果が出たことで欧州EMAにおいて早期承認となった。今後最終解析結果が公表予定であるが、もしOSでの有効性が証明され本邦でも承認となれば、HER2不明の段階でPembrolizumab併用化学療法を行い、HER2の結果が判明した時点でTrastuzumabを上乗せするという治療戦略が考えられる。胃癌では治療を急ぐ症例も多く、かなりの症例でPembrolizumabが使用されるようになるのではないか。今後の展開が待たれる。

  • 1) Janjigian YY, et al.: Lancet. 398(10294): 27-40, 2021 [PubMed]
  • 2) Kang YK, et al.: Lancet Oncol. 23(2): 234-247, 2022 [PubMed]
  • 3) Xu J, et al.: JAMA. 330(21): 2064-2074, 2023 [PubMed]
  • 4) Markus H, et al.: J Clin Oncol. 41(4_suppl): 286-286, 2023 [JCO]
  • 5) Shitara K, et al.: JAMA Oncol. 6(10): 1571-1580, 2020 [PubMed]

監訳・コメント:慶應義塾大学医学部内科学教室(消化器) 平田 賢郎

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