論文紹介 | 毎月、世界的に権威あるジャーナルから、消化器癌のトピックスとなる文献を選択し、その要約とご監訳いただいたドクターのコメントを掲載しています。

11月
2012年

監修:東海中央病院 坂本純一(病院長)

SWOG主導Intergroup study 0116(INT-0116試験)の最終解析:胃癌治癒切除症例に対する術後補助放射線化学療法 vs 手術単独の第III相試験

Smalley SR et al., J Clin Oncol, 2012 ; 30(19) : 2327-2333

 西欧諸国では胃癌に対する術後補助化学療法の試験が数多く行われているが、結果は思わしくない。また局所再発に対する治療戦略も数多く研究されている。
 一方、胃癌治癒切除後の補助放射線化学療法と手術単独を比較した第III相ランダム化試験(Intergroup study 0116 : INT-0116)が1990年代に行われ、2001年の第1回解析ではRFSとOSに有意な改善がみられた。今回は、生存例に対して10年以上の追跡期間を経た同試験の最終解析を報告する。
 対象は、R0切除を受けた胃または食道胃接合部の腺癌患者で、固有筋層への浸潤および/または所属リンパ節転移を有し(1988年のAJCCステージIB〜IVかつM0を含む)、PS 0〜2、1日のカロリー摂取が1,500 kcal以上の者である。患者は手術単独療法群(O群)と術後補助放射線化学療法群(RC群)にランダムに割り付けられた。
 RC群には、まず照射前に5-FU(425 mg/m2/日)とLV(20 mg/m2/日)をday 1〜5に投与し、放射線照射は45 Gy(1.8 Gy/日×5日/週×5週)をday 28に開始した。さらに5-FU(400 mg/m2/日)とLV(20 mg/m2/日)を放射線療法中の最初の4日間と最後の3日間、さらに放射線療法終了1ヵ月後から2コースを4週間の間隔をあけ投与した。放射線は腫瘍床、所属リンパ節、吻合部など局所再発好発部位に対して照射した。放射線療法については過剰照射を避けるためquality cotrolを行った。
 1991年〜1998年に603例の患者を登録し、適格559例をO群277例、RC群282例にランダムに割り付け解析を行った。追跡期間の中央値は10.3年である。
 主な評価項目はOS、RFS、再発形式、安全性である。
 患者の20%が食道胃接合部原発で、大半が局所再発high risk(3分の2以上がT3/4、85%がリンパ節転移)であった。
 RC群のうち放射線化学療法を完遂したのは65%で、治療中止例のうち17%は有害事象、5%は増悪、1%は死亡が原因であった。552例はリンパ節郭清を受けた(D2が9.6%、D1が36%、D0が54%)。
 OS中央値はRC群35ヵ月、O群27ヵ月(イベント数209 vs 229、HR 1.32、95% CI 1.10-1.60、p=0.0046)、RFS中央値は27ヵ月 vs 19ヵ月(イベント数211 vs 237、HR 1.51、95% CI 1.25-1.83、p<0.001)で、どちらもRC群の有意な改善が初回解析以来継続していた。
 OSについて性別、人種、T分類、N分類、D郭清範囲、原発部位、組織学的分類、MI(maruyama index)によるサブグループ解析を行ったところ、性別と組織学的分類に相互関係がみられ、とくにびまん性疾患を有する女性ではRCの効果が低かった。女性は男性に比べてびまん性疾患の頻度が倍近く高かったが(56% vs 30%)、多変量解析では組織学的分類のみが有意にOSに関連していたことから、性別が関連する治療効果への影響は性別そのものというより組織学的分類が影響していると考えられた。リンパ節郭清範囲は治療との相互関係が認められず(p=0.53)、D2郭清患者に対するRCのベネフィットがないというエビデンスは提供できるものではないが、症例数が少ないため統計学的検出力が低く、はっきりしたことは言えない。
 再発形式の解析では、全例の36%が再発なし(RC群48%、O群24%)で、64%に再発がみられた(RC群52%、O群76%)。再発部位は局所が全例で5%(RC群2% vs O群8%)、腹腔内が31%(22% vs 39%)、遠隔が17%(16% vs 18%)、不明が11%(11% vs 11%)で、再発率全体も局所限局再発率もRC群が有意に優れていた。
 RCの安全性であるが、主な急性有害事象は血液毒性および消化管毒性であった。4例が治療後に死亡した。うち2例は放射線療法開始前の死亡であった。長期追跡中に有害事象の発生頻度が高くなったという報告はなかった。2次癌はRC群21例(腫瘍部位は25)、O群8例で有意差はみられなかった。
 INT-0116試験の最終解析結果は、初期の解析結果と同様、胃癌患者に対する術後放射線化学療法はOSとRFSを有意に改善していたことを明らかにした。局所再発も術後放射線化学療法群のほうが少なかったが、遠隔転移の頻度は手術単独群と変わらなかった。したがってOSとRFSの改善は術後放射線化学療法による局所再発の改善によってもたらされたものと考えられる。本試験は5-HT3受容体拮抗薬導入前に開始されたものであり、急性の合併症を伴う率が高かったが、OSとRFSの改善幅が大きいことを考えると忍容可能であると言えよう。以上から、T3以上および/またはリンパ節転移を有する治癒切除後胃癌患者に対して、術後補助放射線化学療法は標準療法として理に適っていると考えられる。

監訳者コメント

放射線療法の併用はD2郭清を伴う胃癌の補助療法治療に必要か

 SWOG9008/INT-0116(Macdonald, J : N Engl J Med 2001)の結果、米国では術後の化学放射線療法(CRT)が標準治療となった(NCCNガイドライン ver2 2007)。今回、生存例に対し10年以上の追跡期間を経た同試験の最終解析がJCOに報告され、局所再発の制御によりOS、RFSともCRTによる有意な改善が初回解析以来継続していた。ただし、サブグループ解析ではD2郭清、低分化型の症例に対する効果は認められていない。
 オランダのretrospectiveな統合解析(Dikken, J : J Clin Oncol 2010)および韓国のARTIST試験(Lee J : J Clin Oncol 2011)でもD2術後のCRTの効果を示すことはできなかった。
 現在の補助療法に世界標準はなく、INT-0116(米国)・MAGIC(欧州)・ACTS-GC(日本)・CLASSIC(韓国)と、大規模臨床試験1本で各国の標準治療が確立している。日本ではACTS-GCのサブグループ解析から、pStage IIIを対象に、より強力な補助化学療法の開発が検討されている。

監訳・コメント 新潟県立がんセンター新潟病院 藪崎 裕(外科部長)

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