消化器癌治療の広場

2014年消化器癌シンポジウム 特別座談会「切除不能進行・再発大腸癌 バイオマーカーの最前線―より高いOS延長効果を目指して―」

Discussion 2
欧州のRAS 検査の現状

吉野: 欧州におけるRAS 検査の状況はどうなっているのでしょうか。

Douillard: 欧州では、ほとんどの国でRAS 検査が行われています。フランスでは政府主導のもと、国立癌研究所が全国28ヵ所に分子生物学プラットフォームを指定して品質管理を行っており、大腸癌ではNRAS /KRAS /BRAF 検査、肺癌では7つのバイオマーカー検査が行われています。ドイツ、スペイン、イタリア、イギリスをはじめとする欧州各国も徐々に同じ方向へと進んでいますが、米国は少し遅れているようです。

市川: 検査結果が出るまでの日数と費用を教えてください。

Douillard: 院内で腫瘍組織ブロックを作製した場合、検査結果が出るまで7〜10日程度かかります。また、フランスの健康保険制度は全国民の税金により賄われています。RAS 検査は全て助成金により行われており、無料です。

吉野: フランス以外の国はどうでしょう。

Douillard: 欧州では、民間保険を利用する国もあれば、政府が支援している国もあり、国によってかなり異なります。

吉野: 米国では、NRAS 検査だけで1,000ドルかかるそうです。

Douillard: 費用がかかり過ぎですね。

吉野: 実臨床においてコストは非常に重要な要素です。次世代シークエンシングも魅力的なのですが、非常に高価です。

Douillard: フランスでは、プラットフォームごとに検査法が異なるため、標準化を図るために、全てのプラットフォームに次世代シークエンサーを装備することに決めています。大規模な大学病院には病理検査室があり、技術者や分子生物学者もいるので、次世代シークエンシングの実施にそれほど費用はかからないと判断したわけです。

谷口先生

谷口: RAS 検査だけでなくBRAF 検査を含めているのはなぜでしょうか。

Douillard: BRAF 検査を決定したのは約3年前で、当時はBRAF が予後因子であることが明確には示されていませんでした。ただ、BRAF 変異に関する情報も有用で、私は実際に、BRAF 変異型の患者に対してはFOLFOXIRIによる治療を行っています。

吉野: 日本では内視鏡生検がよく用いられますが、相当量のDNAが必要なダイレクトシークエンス法を使用することが多いため、多量の生検検体が必要になります。

Douillard: フランスでは多くの場合、原発巣を切除するので、腫瘍組織についての問題はありません。また、直腸鏡や大腸内視鏡の検査中にも、大きな組織を採取するのに十分なサイズの鉗子を使用しています。

谷口: RAS 遺伝子の一部の測定に失敗した場合は、どう扱うのでしょうか。

Douillard: 変異型とみなします。リスクは負いません。

吉野: 日本臨床腫瘍学会ではRAS ガイドラインを作成中ですが、ESMOのRAS ガイドラインはいつ公開されますか。

Douillard: Dirk Arnold先生らにより論文が投稿されたので、間もなくpublishされると思います。

line
前のページへ       次のページへ
        座談会トップへ戻る
MEDICAL SCIENCE PUBLICATIONS, Inc
Copyright © MEDICAL SCIENCE PUBLICATIONS, Inc. All Rights Reserved