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GI cancer-net 海外学会速報レポート 2014年6月 シカゴ

背景と目的

 CAIRO3試験は、切除不能進行・再発大腸癌に対するCapecitabine + L-OHP + Bevacizumab (Bev) (CAPOX-B) 療法による導入療法でPDのない患者を対象として、維持療法としてのCapecitabine + Bev療法と経過観察を比較検討した第III相試験である。2013年に初報が報告され1)2014年消化器癌シンポジウム2) および今回の米国臨床腫瘍学会年次集会において最終解析が報告された。

対象と方法

 対象は、初回導入療法としてCAPOX-B療法 (Capecitabine 1,000mg 1日2回 day 1-14内服、L-OHP 130mg/m2 iv、Bev 7.5mg/kg iv、3週毎) 6サイクル後にCR、PRもしくはSDと評価され、その後CAPOX-B療法の継続・再開が可能と考えられる、PS 0/1の切除不能進行・再発大腸癌患者である。

 対象患者は、経過観察群と維持療法群 (Capecitabine 625mg 1日2回連日内服、Bev 7.5mg/kg iv、3週毎) に無作為に割り付けられ (割付調整因子:術後補助化学療法の有無、LDH値、導入療法に対する効果 : CR/PR or SD、PS、施設)、初回増悪時にはCAPOX-B療法を再開し (無作為化から初回増悪までの期間 : PFS1)、さらに増悪するまで続行することとした (無作為化からの2回目の増悪までの期間 : PFS2) (図1)

図1

 なお、PFS1は「無作為化から初回PDまでの期間」、PFS2は「無作為化から2回目のPDまでの期間」とし、CAPOX-B療法を再導入できなかった患者は、PFS1=PFS2とした。

 主要評価項目はPFS2であり、維持療法群の経過観察群に対するHRを0.78 (PFS2: 経過観察群9ヵ月、維持療法群11.5ヵ月に相当) とし、維持療法群の優越性を検証した。両側α=0.05%、検出力80%により、必要症例数は525例であった。副次評価項目はOS、TT2PD (PFS1後に受けたすべての治療における2回目のPDまでの期間)、QOLであった。また、その他いくつかのサブグループ解析が事前に計画されていた。

結果

 オランダの64施設から558例が登録され、経過観察群279例、維持療法群279例に割り付けられた。2群間の患者背景はバランスがとれており、観察期間中央値は48ヵ月であった。

 PFS1中央値は、経過観察群4.1ヵ月、維持療法群8.5ヵ月と維持療法群で有意に良好であった (HR=0.43, 95% CI: 0.36-0.52, p<0.0001) (図2)

図2

 主要評価項目であるPFS2中央値は、経過観察群8.5ヵ月、維持療法群11.7ヵ月と、維持療法群で有意に良好であった (HR=0.67, 95% CI: 0.56-0.81, p<0.0001)(図3)

図3

 CAPOX-B療法を再導入できなかった患者は、経過観察群37.3% (104例)、維持療法群47.8% (133例) であり、CAPOX-B療法を再導入しなかった症例のPFS1以後の治療は、経過観察群ではCapecitabine + Bevまたは5-FU + Bevが49%、CPT-11単剤18%、無治療30%であり、維持療法群ではそれぞれ12%、42%、34%であった。

 CAPOX-B療法を再導入できなかった症例をイベントとせず、初回SD後のすべての治療における増悪をイベントとした場合の増悪までの期間 (time to second progression of disease: TT2PD) の中央値は、経過観察群11.1ヵ月、維持療法群13.9ヵ月と、維持療法群で有意に良好であった (HR=0.68, 95% CI: 0.57-0.82, p<0.0001)。

 一方、無作為化からのOS中央値は、経過観察群18.1ヵ月、維持療法群21.6ヵ月であり、有意差は認められなかった (HR=0.89, 95% CI: 0.73-1.07, p=0.22) (図4)。なお、導入療法からのOS中央値は、経過観察群22.4ヵ月、維持療法群25.9ヵ月であった。

図4

 QOLは経過観察群においても維持療法群に劣らずQOL scoreが維持されていた。また、全治療期間における4剤の化学療法剤を使用した割合 (51% vs. 51%) および5剤使用割合は同等であった (13% vs. 12%)。

 PFS1、PFS2、TT2PDのサブグループ解析では、維持療法群の有用性がみられた。OSの多変量解析によるサブグループ解析において、同時性病変に対する原発巣切除例、無作為化前の初回導入療法 (CAPOX-B療法) に対する奏効例 (CR/PR) などで、有意に維持療法との関連が認められた (図5)

図5

結論

 CAIRO3の最終解析において、CAPOX-B療法6サイクル後のCapecitabine + Bev療法による維持療法の有用性が、PFS1、PFS2、TT2PDについて確認された。OSについては、全体の解析において維持療法の有用性は認められなかったが、多変量解析モデルでOSに対する維持療法の有用性が認められた。QOLは維持療法でも経過観察と同様に保たれていた。

コメント

 CAIRO3試験は演題#3503と同様に、切除不能進行・再発大腸癌の化学療法における無治療期間 (Chemotherapy-free intervals) の評価に関する報告である。

 CAIRO3試験1) は、CAPOX-B療法による1st-line治療後のCapecitabine + Bevによる維持療法の有効性について検討した試験であり、2013年の米国臨床腫瘍学会年次集会において発表された。本報告はCAIRO3試験1) の追加サブ解析と最終解析報告である。

 前回報告ではPFSに有用性を認めたことから、CAPOX-B療法後の経過観察に対する維持療法のCapecitabine + Bev療法の有用性が検証されたが、OSについては本解析を含め有意差は認められなかった。

 本websiteにおける昨年の現地座談会では、1st-line後の治療戦略として「intermittentかcontinuousか」が1つの論点として維持療法を捉えていると討議されたが、本発表後のディスカッションでは、さら一歩踏み込んで、医療経済と患者の価値観まで踏み込むような内容も盛り込まれていた。詳細は、同じ維持療法発表の演題#3503のコメントに紹介したのでご覧いただきたい。

(レポート:坂井 大介 監修・コメント:佐藤 温)

Reference
  1. 1) Koopman D, et al.: 2013 Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology®: abst #3502[学会レポート
  2. 2) Koopman D, et al.: 2014 Gastrointestinal Cancers Symposium: abst #388[学会レポート

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